ミッドライフ・クライシス -占星術と歩く中年期の危機-

ミッドライフ・クライシス

-占星術と歩く中年期の危機-

ミッドライフ・クライシスとは、四十代から五十代前半にかけて経験される心理的・感情的な不安や葛藤のこと。そんな、さまざまな出来事に直面している人たちを、岡本翔子さんがインタビューします。
困難にぶつかったとき、占星術を通して人生を振り返り、今後の豊かな未来を探っていく歩き方、あなただけの生き方を、岡本さんとともに見つけてみませんか。


第7回(2026.3.6)
ケーススタディ 5

Eさん(50代)  子育て教育アドバイザー / 既婚 / 天秤座
Eさんの心理タイプデータ
Eさんの心理タイプのバランス表をポイントで計算した場合 ※各惑星のポイント表は第2回をご覧ください。

自分を取り戻す天秤座のEさんの生き方

 今から10年くらい前、私が毎年出版している月のカレンダーのイベントが福岡で行われた際に、主催者の方から紹介されたのがEさんです。開口一番、「私は天秤座なのですが、月星座を調べてみてびっくり。自分の中でモヤモヤしていたことがクリアになりました。天秤座特有の、平和を愛し社交的で人とつながりたいという欲求が強いのは確かです。風の星座なので性格もサバサバしているのですが、月星座が蟹座でした。子どもの頃から空想好きでおせっかい、意外と傷つきやすい面もあり、その二つの性質が自分の中にあると知り、がぜんと占星術に興味が湧きました」と話してくれました。

 Eさんは長年、幼児教育に携わった後にご結婚、そして5年に渡るつらい不妊治療を経たのちに出産を経験されています。現在では、子育て中のママたちを応援するさまざまな企画を全国で展開する、福岡では名の知れた方だったのです。幼児教育、学習塾、幼稚園や保育園などへのコンサルティング、講演、各種研修などにも尽力され、テレビ西日本(TNC)のローカル情報番組でも、子育て教育アドバイザーとしてレギュラー出演されています。毎日頑張っているママたちに「子育てをもっと楽しく!」を伝える「ママのご褒美サロン」を2011年から全国各地で行い、この15年間で延べ1万人⁉ の方が参加してくださっているとか。
 いつも明るくてポジティブなEさんですが、ちょうど中年期にさしかかるころ、壮絶な不妊治療を経験したと聞いています。また子ども時代はアイドルに憧れていたという彼女に、これまでの人生についてお話を聞くことができました。

アイドルに憧れながらも、みんなを楽しませたい思春期

「子どもの頃から“妄想大好きっ子”でした。当時テレビで大人気だったピンクレディや山口百恵さんみたいな国民的アイドルになることを、リアル妄想しながら、自分のサインを考えたり、オリジナルソングを作曲してみたり(笑)。小学生の頃は、毎日、脳内アイドル活動に勤しんでいました」
 これは蟹座に月がある子どもたちがよくやる遊びです。「もしこうなったら……」とリアルに想像して空想に耽るのです。月星座は自我に目覚める前の幼少期の性質を表します。夢見がちだった少女はやがて中学、高校へと進みます。勉強ができ福岡でも有数の進学校に入学したEさんですが、思春期ともなると太陽星座の天秤座らしき性格も現れてきます。
「社交的でみんなを楽しませたいという気持ちが強かったですね。体育の先生たちが歌え! と私を煽るんです。当時、テレビで芸能人の水泳大会がありまして、キョンキョンや早見優さんがよく出ていました。私の十八番は優ちゃんの『夏色のナンシー』でした。今、ご縁があってテレビのコメンテーターをしていますが、本番前に出演者みんなで気分を高めていく時間があるんです。よし! とスイッチが入る、その瞬間が好きなんですね。あ、でも私はタレントではなく(笑)子育て教育アドバイザーとして出演しています。観ているお母さんたちを元気にしたい。お洋服も品格を感じるものを選ぶようにしています」
 上品で美意識やバランス感覚に優れ、人を楽しませたい、そして自分自身も人生を存分に謳歌したいというEさんの天秤座らしさが見えるエピソードです。

 ここで改めてEさんの出生図を見てみましょう。ホロスコープを構成する10天体のうち、火(直観機能に相当)が4つ、残りの地(感覚機能)、風(思考機能)、水(感情機能)にはそれぞれ2天体が占めます。天体の数だけでは心理タイプは割り出せません。これに影響力の強い太陽や月などを点数化してカーブをつけてEさんの心理タイプを割り出してみると、直観(火の星座)10点、感覚(知の星座)2点、思考(風の星座)8点、感情(水の星座)6点という結果になりました。Eさんは天秤座生まれなので、クールで論理的な思考タイプかと思いきや、情熱的で未来志向、ひらめき重視の直観機能にも優れています。後にEさんは幼児教育で大手として成長する会社の黎明期に参加し、持ち前の直観機能を開花させて、会社の成長に大きく貢献することになります。
  月星座が蟹座にあるので、水の星座には2天体しかないにもかかわらず、人の気持ちに寄り添う情緒的な面もあります。Eさんのホロスコープで、最も欠けている要素は地の星座の感覚機能でしょう。地球から遠く離れた冥王星や天王星が地の星座である乙女座に位置していますが、これは世代的なもので個人への影響はあまりありません。したがってEさんが人生後半に意識するべきは、五感を使って感覚機能を磨くことになるでしょう。

幼児教育の現場で、直観機能を発揮する

 子ども時代に抱いたアイドルへの憧れも、大学に進むころにはいつしか忘れ、卒業後は大手英会話スクールに就職します。時代はまさにバブル期です。留学に興味があり旅行好きでもあったEさんは、出張なども多いその会社で3年間楽しく働きました。その後、彼女は次の就職先となる、やがては幼児教育の大手に成長する会社と出会います。右脳教育を提唱する七田チャイルドアカデミー(以下、七田)です。
「七田は幼児教育そのものがまだ認知されていない時代に、通信教育から始めた会社です。第1号教室の開校が1988年で、私が入社したのはその4年後くらい。まだ軌道に乗れておらず、ちょうど九州事業所を作るタイミングだったんです。営業目標は全国で200教室、生徒数を1万人に増やす! でした」
 その際の面接官が後にEさんのメンター(仕事やキャリアのお手本となって若手社員を指導する人、精神的指導者)で、最終的には取締役副社長となる方だったとか。彼は組織としてこれからの時代、女性の営業職や女性の幹部リーダーの必要性を感じ、彼女を採用します。
「九州の教室が少なかったので、教室を増やさなくてはならない。営業して契約書を交わしたら終わり、ではありません。教室として成り立たせるためには、その方たちとよい関係を築いていかなくてはならない。できることは何でもやりました。メールのない時代だったので各お教室に足繫く通ったり、電話したり、ハガキを書いたり。太陽・天秤座の社交性&コミュニケーション力、そして月・蟹座の、相手の気持ちに寄り添ってお世話する力のおかげでしょうか。お教室はどんどんと増えていき、うれしいと同時に責任感もひしひし感じる日々でした」
 右脳教育を謳う七田式教育については、当初から賛否両論があったといいます。それでもEさんは創業者の理念を深く理解して、一人でも多くの子どもたちやその母親たちを笑顔にしたいと頑張ります。興味深いのは七田式教育が提唱するイメージトレーニングや右脳記憶法は、ユングのタイプ論でいう直観機能を開発していくメソッドでもあります。ホロスコープのバランス表で、直観機能(火の星座の要素)に優れるEさんにとっては、とても共感できる勉強法だったに違いありません。
 入社して数年後には会社も大きく成長し、Eさんはその功績を買われて30代そこそこで東京本部長に任命されます。仕事は大変だけどやりがいもある、まさに順風満帆の人生だったのでしょう。34歳で再び福岡支部に移動となり、Eさんは知り合いに紹介された4歳年上の男性と結婚します。

暗黒の不妊治療時代 思い通りにならない現実を突きつけられる

「新婚生活と仕事を両立させて、忙しくも楽しい日々を過ごしましたが、1年たっても妊娠の兆候がなく、少し焦りはじめました。私は健康優良児でしたし、結婚したらすぐに子どもができると思っていました。失礼な話ですが、もし何か問題があるとすれば、私よりも繊細、理数系で超インドア人間のオットに原因があるのではと。それでオットを引っぱって不妊治療で有名な病院の門をくぐるんです……。先生から告げられた事実は、『奥さん今、36歳? ちょっと赤ちゃん、できにくいかなぁ』だったのです」

 30代後半といえばまさに中年期の入り口です。幼児右脳教育の現場で「イメージすることは実現する」という理論を日々実践してきたEさん。心に思い描いたイメージをもとに、ちゃんと行動を起こし、努力も重ねて仕事で実績を上げる。私生活でも理解のある配偶者に恵まれ、充実した人生を送ってきた彼女に、ミッドライフ・クライシスの陰が忍び寄ります。
「はい。そこから約5年にわたる不妊治療が始まります。当時の私はバリバリの熱血会社員で中間管理職。結婚適齢期の女性の部下も十数名いました。不妊治療はまずタイミング法(排卵時期を調べて妊娠しやすい時期を探る)から始まり、『人工授精』『体外受精』『顕微授精』と段階を踏みます。根本的に楽観的な私です。通院すればすぐに妊娠できるだろうと思っていました」
 その後のお話は、なんとも壮絶な妊活ストーリーです。自然妊娠を促すタイミング法から、月1回の人工授精に進んでも妊娠の兆候はなく、やがては体外受精か、顕微授精を選択する段階に至ります。医者の勧めで顕微授精へと治療法をステップアップしたEさんですが、治療費などもそれまでに比べて格段に上がり、身体への負担もストレスも大きくなっていきました。
 当時まだフルタイムで働いていたEさんですが、6回目の顕微授精が失敗に終わるころには39歳になっていました。彼女が不妊治療を行っていることを知った上司が、会社始まって以来の英断を下します。これまで女性初の営業部門管理職として頑張ってきた労いの意もあってか、1年間の妊活休暇を取得することになるのです。
 何事もポジティブでプラス思考だったEさんですが、出口の見えない不妊治療を続けるうちに、いつしかマイナス思考に陥っていたといいます。
「ありがたすぎる辞令ですが、無給になると高額な不妊治療費が払えるのか。休暇中に妊娠できなかったら……。そもそも旅行以外に夢中になれる趣味もない。料理やハンドメイド?違うなと」

眠れる感覚機能を呼び覚ますレッスン

 今一度、Eさんのホロスコープをひも解いてみましょう。火の要素である直観機能と風の要素である思考機能に優れるものの、五感を通じて世界を認識する感覚機能(知の星座に対応)が圧倒的に少ないのです。中年期の危機とは、「人生前半の価値観が崩れ、無意識の声が聞こえてくるとき」です。今まで使ってこなかった感覚機能を無意識の中から呼び覚ますべきときが来たようです。
「妊活休暇を取るご報告に、今までお世話になった方々にご挨拶に行ったら、こんな言葉をいただきました。いつも仕事に一生懸命で、季節を感じることもなかったのではと。空を見上げて雲の形を眺めるとか、道端の花の香りを嗅いでみるとか。これからはぜひそんな日々を過ごしてみて、と言われたんです」
 1年間の妊活休暇とは、まさに人生のリトリート期間だったのでしょう。忙しい仕事や日常から一時的に離れ、心身をリフレッシュし、自分自身と向き合う特別な時間を過ごす。Eさんはその期間を「仕事を忘れ、五感を大事にする日々を過ごす」と決め、毎日散歩をしたり、ヨガや運動に通って体作りにも取り組んだそうです。それはまさに眠れる感覚機能を呼び覚ますエクササイズだったのでしょう。不妊治療に関する匿名ブログも始め、同じ悩みを持つ女性たちとも交流していったそう。自分に足りない感覚機能=五感を磨きつつ、人とのつながりを求める天秤座らしさも発揮するEさんに、有力な情報がもたらされます。

「妊活休暇も4か月が過ぎたころ、ブログ仲間から別の病院を紹介されるのです。そこでも顕微授精を勧められます。病院を変えることが何となく背徳行為のような気がして悩んだのですが、どうしても子どもが欲しい。通院中だった不妊治療専門病院では、7回もの顕微授精を行いましたが(子どもが)授からなかった。その病院で8回目の顕微授精に臨むのですが……」
 決して妊活をあきらめなかったEさんに奇跡が訪れます。40歳のクリスマス前にEさんは妊娠し、41歳になる2か月前に男の子を無事出産します。
「5年に及ぶ不妊治療では、顕微授精1回30万円x8回で240万円。数えきれないほどのホルモン注射1回1万円。薬代に通院のための交通費などを入れると、ゆうに500万円はかかりました。それでもどんな大金でも買えない、世界で一番の宝物を授かりました」

奇跡の妊娠。心の機能を息子に教えられる奇跡の日々

 長期に渡る不妊治療期間、それは同時に自分の無意識の海を航海する旅のようなものだったのではないでしょうか。そもそも天秤座は人間が備え持つネガティブな部分、醜い性質などをできれば見たくないと願う星座です。自分の心の深層と深く向き合わざるを得なかった妊活期間には、きっと自分の嫌な面や弱い部分も見ただろうと思われます。その旅の終わりにEさんが手にしたのは、中年期の危機を心豊かに過ごす最強のカードです。
 それはEさんの息子さんのKくんです。なんと彼はEさんの出生図の中で最も弱い感覚機能に対応する地の星座・乙女座生まれです。しかもKくんは出生図で圧倒的に地の星座が多い感覚タイプです。Eさんは息子Kくんを通じて、人生の後半には五感豊かな感覚の世界に触れ、経済観念やコツコツと地道に何かを築き上げていく術なども学んでいくことになります。

 時は流れて、子育て中のEさんと息子Kくんが交わす会話の中にも、大きな発見があります。
「夕食の準備中に息子が、目を輝かせながら『お母さん、見て、見て』と読んでいる本を見せに来ます。私は『今、急いでごはんを作っているから、もうちょっと待ってね』と答えていました。そんな状況が続くある日、息子が言うのです。『お母さん、“もうすぐ”とか、“もうちょっと”ってよく言うけど、あと何分なのか、具体的に言ってくれないとわからないよ』と。素直に感心してしまいました。それからは『あと30分、今7時だから7時半になったら』と時計やテレビの時刻を指しながら伝えると、時間の概念を教えるいい機会にもなりました」
 なるほど~。これぞ概念的な風の星座・天秤座母VS具体的な地の星座・乙女座息子の会話です。私の知るケースでは、高齢出産、つまり中年期の危機を迎えるころに生まれた子どもが、母親のホロスコープに欠ける心理機能を多く持っていることがままあります。たとえば出生図に風の星座がゼロの母親に、風の星座だらけの娘とか。相性の良し悪しはケースバイケースですが、きっと人生後半に子どもから教えられることが多いのでしょう。

さらなるクライシス。メンターとの決別 独立を決意する

 ミッドライフ・クライシスに関わる惑星は、84年を公転周期とする天王星です。Eさんが天王星のハーフリターン(半回帰)を迎えたのは、41~43歳(天王星が動きが遅いので、その影響は数年間に及びます)でした。それはちょうど、育休期間を終えたEさんが会社復帰を果たしたころに符合します。Eさんの出生図の天王星の位置(乙女座25度)に対し、進行中の天王星が真反対に来たとき、面接で彼女を採用してくれた方が経営陣と袂を分かつことになり退職します。
「育児と仕事の両立は大変でしたが、毎日が楽しく一生、七田で働くつもりでした。私の恩人、メンターでもある方が辞めると聞いて呆然となり、吐き気すら催しました。それくらいショックな出来事でした」
 その後しばらくしてEさんは20年以上も働いた会社を退職し、子育て教育アドバイザーとして働きはじめます。きっとEさんにとってのミッドライフ・クライシスは、まず前哨戦としての不妊治療期間に始まり、やがてはメンターからの自立や個人事業主としての独立の時期に重なっていたようです。

 独立後、Eさんはブログを活用し、子育て中や妊活中のママたちとのネットワークを広げていきます。そして息子さんが3歳になるころ、がんばっているママたちを笑顔にしたいとの思いから「ママのご褒美サロン」を始めます。
「自分自身がママになって感じたことは、ママだって認めてもらいたいし、自分を見つめ直す場や、同じ立場のママたちと出会い話をする機会が欲しい、だったのです。でも公民館やビルの会議室では夢がない……」
 Eさんはママたちが日常を離れ、少し優雅な気分になれる素敵なカフェを見つけ、そこを会場にすることに。このコンセプトは美意識が高く社交性に優れる天秤座ならではの発想です。面白いことに、「ママのご褒美サロン」を始める際、Eさんの中には3つの重要な取り決めがあったといいます。それは、
1、 参加された方々、一人ひとりが自分のことを話す時間を作る
2、 お子様のことを話してもらうときには「親バカ」になってもらう
3、 参加された方どうしのご縁をつないでいくこと

 やはりEさんは論理的に物事を考える思考機能に優れるタイプで、人と人とをつなぐ力に長ける天秤座だなと思わされます。単に集まってダラダラおしゃべりをし、愚痴をこぼしあうのではなく、未来につながるコンセプトを考え、そこはクールに運営をしていく。だからこそ、この「ママのご褒美サロン」はその後、15年も続き、1万人に近い方々の社交の場となったのではないでしょうか。

風の星座の軽やかさで“自分自身”を生きる

 その後のEさんは、育児期女性が柔軟に働ける環境を提供し、彼女たちの社会復帰をサポートするNPO法人などの理事も務め、企業とママ人材をつなぐ「ママドラフト会議」などにも関わっています。50代初めには育児や教育、女性の就労などについての初のご著書も出版、またママたちとリアルな交流ができなかったコロナ禍には、オンラインサロンを始めるなど、まさに八面六臂のご活躍ぶりです。
「いや単にみなさんが心配で、基本、おせっかいなんです。今では幼稚園や保育園の顧問として経営者の方をサポートしたり、小学校のPTAの方から頼まれて講演や講座をやったりもしています。今後は会社員時代の経験も生かし、幼児教育もしっかりやっていきたい。またそのお教室を経営する人たちが立派にお金が取れる人になるように(つまりビジネスとして成り立つように)育てていきたいのです」

 このインタビューは、福岡にあるEさんおすすめの健康的なランチができるおしゃれなカフェで行いました。
「ミッドライフ・クライシスを迎えたころは、仕事に育児と無我夢中でした。ホロスコープで私に欠けている感覚機能を、息子から教わるというのが面白いですね。いつも忙しく『誘われたら断らない』でスケジュールを埋めてしまう私ですが、自分の精神面を落ち着かせるために『静の日』というのを設けています。その日は時間に縛られずに事務処理をしたり、自分自身と向き合ったり、家族のためにちょっと凝った料理を作ったりします」
 さすがバランス感覚にも優れる天秤座です。仕事や自分の心が不安定だった中年期の危機の教訓を生かし、自分に欠けている心の機能を自覚しながら、充実した五十代後半を過ごしているようです。
 人はミッドライフ・クライシスを迎え、無意識の中にある「パーソナリティの劣っている部分」や「使ってこなかった心の機能」に出合います。そこでめざすのは、「もっと優れた別の人間」になることではありません。私たちは中年期の自分の心の中を旅して、やがては「私自身」に帰ってくるのです。でもそれはかつての「私」ではなく、苦手な機能を自覚し、その機能を少し使えるようになった「私」です。
 根が真面目なEさんは私に質問します。
「私に足りない地の星座の要素、感覚機能を自覚するには、もっと何かしたほうがよいのでしょうか」
 私はちょっと意地悪く答えます。
「うう~ん。手の感覚に集中する趣味? たとえばパンをこねるとか、あ、でも苦手だろうなぁ。山に一人で籠って土をこねる陶芸とか(笑)」
「一人で、ですよね(汗)。あ~無理です、無理です。私なら仲良しの友人に『お金は払うから一緒に行って』と誘っちゃいますね」
 これぞ天秤座! どこまでも社交的で、人とつながっていたいEさんでした。


著者 岡本翔子(おかもと・しょうこ)
心理占星学研究家。ロンドンにある英国占星学協会で、心理学をベースにした占星術を学ぶ。英国占星学協会会員。
『完全版 心理占星学入門』(文春e-Books)、『「月のリズ ム」で夢をかなえるムーン・マジック』(KKベストセラーズ)、『占星学』リズ・グリーン著(青土社、鏡リュウジ共訳)、『月の心理占学』(方丈社)、『月 のリズムで暮らす本』『月の大事典』テレサ・ムーリー著 (ヴィレッジブックス、監訳)『ハーブ占星術』エリザベス・ブ ルーク著(東京堂出版、翻訳・監修)など、著書・訳書多数。
月の満ち欠けカレンダーを記し、月のリズムを生活に生かすヒントが満載のダイアリー『MOON BOOK』は2004年からのロングセラーで、2024年からWEBサイト版がスタート。『MOON BOOK 2025』がサイト内で発売中。自身が毎年発行する『MOON CALENDAR』(リボンシップ)も好評発売中。
また、占星術と料理、コスメ、旅などを組み合わせたコラムを『CREA』『美ST』『料理通信』『ESSE』などの雑誌連載を中心に執筆。『CREA』、「CREA WEB」「婦人画報」など多数の女性誌にも、月間星占いや月星座占い、ムーンカレンダーを連載中。毎年、各地でセミナーやイベントを行い、開催ごとに盛況となっている。
モロッコの砂漠で見る月に魅せられ、三越旅行や風の旅行社と組んで不定期に「月の砂漠ツアー」を行っている。
FaceBook 岡本翔子のMoonBook https://www.facebook.com/moonbook.jp/
岡本翔子オフィシャルサイト http://www.okamotoshoko.com
オフィシャルブログ https://ameblo.jp/okamotoshoko/
インスタグラム https://www.instagram.com/okamoto_shoko
岡本翔子監修WEBサイト「MOON CH」 https://www.moonch.jp


これまでの内容はこちら


幸福の鍵は月星座が握っている!
月の魅力を知って人生をもっと豊かに!

二人体制で会社を経営することになります。私は引き続き、亡き社長が考えていた方向性を維持させてあげたいと思っていました。それが恩のある社長に報いることだと」
 一方で長年その会社に尽くしてきた女性社長は、これからは自分のやり方で会社を経営したいと思うように。対するD氏は役員会などで、経理上の問題点を提示するようになります。双方の理想と現実がぶつかり合い、その会社との契約は2024年に終了します。
 中年期の危機を迎えると今までの仕事のやり方が否定されたり、うまくいっていたはずの人間関係を再構築せざるを得ないような問題が起こったりします。仕事や生活には大きな変化はなくても、D氏の四十代は仕事の進め方や顧客との関わり方を再考させられる時期だったかもしれません。

「前の経理事務所を辞める27歳の頃から、いつかは税理士試験を受けたいと思っていました。でも計理士の仕事というのは10月から5月までが繁忙期で帰りが終電になる日も多く、試験は1年に一度、8月第1週目です。6月と7月しか試験勉強に充てられません。何年か勉強し、そのうち子育てが忙しくなり、また何年かやって断念する、を繰り返していました。それがコロナで電車通勤がなくなり、勉強時間を捻出できるようになりました」
 四十代後半に差しかかる頃、D氏の本気スイッチが入ります。税理士試験の中の5科目中2科目は、大学院に通って修士論文を書くことで免除されるとのこと。そこでD氏は一念発起して会計専門職大学院に通い、2年間ひたすら勉強して修士論文を書き上げます。
「授業料は200万円くらいかかりました。コロナ禍でしたがマスクをして授業を受け、まず簿記論、財務諸表論、固定資産税の3科目をクリアしました。修士論文は『交際費課税について』、この業界ではあるあるのテーマです(笑)」
 中年期を迎えると、今まで使ってこなかった未発達の心の機能が、無意識の扉をこじ開けて表面に現れてきます。D氏の場合、出生図に風の星座も少ないので、人生の前半ではあまり思考機能を使ってこなかったかもしれません。風の要素が少ないと、言いたいことを言語化する能力が弱く、人によっては知的コンプレックスを抱く人もいます。四十代で大学院に行き、修士論文を書くという行為は、眠れる思考機能を目覚めさせるよい訓練になったでしょう。

「D氏の電卓のおかげで店が建った」

 そして五十代を迎え、晴れて税理士試験にも合格したD氏には、新たな挑戦が待ち受けています。それは今の会計事務所を辞め、独立することです。 「現在の事務所の所長から、共同経営の話も出たのですが、彼とは少し仕事の方針が違うのです。所長は企業というか、しっかり単価の取れる顧客が欲しい。でも私はどちらかというと“入り込みたい”んです(笑)。私でなくてもいいクライアントではなく、私を求めてくれる人を探しにいきたいのです」
「ある顧客の話をします。最初は自宅の一角で始めたジュエリー制作ですが、努力して会社を興し、やがては原宿で店舗を出すまで成功しました。そこの女性社長が『D氏の電卓のおかげでコレ(店)が建った』と。グサッときました。これまで働いてきて一番うれしかった言葉です」
 お話を聞きながら、私は心の中で「うわっ、典型的な蠍座発言、いただきました!」と小躍りしました。そう、蠍座は仕事に、また関わった人にも深く深く入り込みたいのです。口が堅くて愛情深い蠍座ならではの発言でした。きっとD氏は経理=金銭という数字を通じて、顧客の人生に深く関わり、その人が望む人生を送れるように背後から支える仕事がしたいのでしょう。
「お客さまの一言ひとことが大切。それが仕事のモチベーションになります。だから私は経営オンリーではなく、やはりお客さまの担当としてやっていきたいんですね」
 世の中にはいろんなタイプの税理士さんがいます。D氏にはその豊かな感受性でクライアントの背後にある想いを汲み取り、彼らが幸せになる方向へと導く水先案内人になってほしいと思いました。

 今後最大の課題は、彼のホロスコープで一つの惑星もない地の星座(感覚機能に相当)を意識し、自分の経験やアイデアをきちんと仕事や金銭という報酬に結びつけていくことにほかなりません。これからは苦手な営業にも挑戦して、しっかりと利益を上げていってほしいと思います。独立の際にはきっと彼の奥さまが重要な役割を果たすことになるでしょう。なぜなら奥さまは地に足のついた山羊座だからです。自分の苦手な機能を、パートナーや子どもを通じて学んだり補ったりすることはよくあります。また地の星座が欠けていると、自分の肉体の変化に無頓着なので、今後はもっと健康にも気をつけてほしいと思いました。

人はそれぞれの物語を生きて成長する

 さて最後に私は気になっている質問をしてみました。
「幼少期に外国での恐怖体験があると、海外旅行に行くのも躊躇します?」
D氏は笑いながら答えてくれました。
「いや結婚してからは家族でバリ島や台湾、ベトナムにも行きました。うちの奥さんはホテルのエステに行くのが好きなんです。そういうとき私は娘たちとプールで遊ぶのですが、片時も絶対に離れませんっ(笑)」
 そんな心配性の父親に育てられたお嬢さんたちも今では立派に成長し、それぞれ仕事を持ち、独立して暮らしているそうです。

 中年期に目立った変化がなかった人の話が聴きたい、と思って始めたD氏へのインタビューですが、人間の心の中は複雑でとても深い。そしてどの人にも固有の物語があり、そのストーリーを生きる過程で人は大きく成長することができるのだと確信を深めました。


著者 岡本翔子(おかもと・しょうこ)
心理占星学研究家。ロンドンにある英国占星学協会で、心理学をベースにした占星術を学ぶ。英国占星学協会会員。
『完全版 心理占星学入門』(文春e-Books)、『「月のリズ ム」で夢をかなえるムーン・マジック』(KKベストセラーズ)、『占星学』リズ・グリーン著(青土社、鏡リュウジ共訳)、『月の心理占学』(方丈社)、『月 のリズムで暮らす本』『月の大事典』テレサ・ムーリー著 (ヴィレッジブックス、監訳)『ハーブ占星術』エリザベス・ブ ルーク著(東京堂出版、翻訳・監修)など、著書・訳書多数。
月の満ち欠けカレンダーを記し、月のリズムを生活に生かすヒントが満載のダイアリー『MOON BOOK』は2004年からのロングセラーで、2024年からWEBサイト版がスタート。『MOON BOOK 2025』がサイト内で発売中。自身が毎年発行する『MOON CALENDAR』(リボンシップ)も好評発売中。
また、占星術と料理、コスメ、旅などを組み合わせたコラムを『CREA』『美ST』『料理通信』『ESSE』などの雑誌連載を中心に執筆。『CREA』、「CREA WEB」「婦人画報」など多数の女性誌にも、月間星占いや月星座占い、ムーンカレンダーを連載中。毎年、各地でセミナーやイベントを行い、開催ごとに盛況となっている。
モロッコの砂漠で見る月に魅せられ、三越旅行や風の旅行社と組んで不定期に「月の砂漠ツアー」を行っている。
FaceBook 岡本翔子のMoonBook https://www.facebook.com/moonbook.jp/
岡本翔子オフィシャルサイト http://www.okamotoshoko.com
オフィシャルブログ https://ameblo.jp/okamotoshoko/
インスタグラム https://www.instagram.com/okamoto_shoko
岡本翔子監修WEBサイト「MOON CH」 https://www.moonch.jp


これまでの内容はこちら


幸福の鍵は月星座が握っている!
月の魅力を知って人生をもっと豊かに!