書 籍

新刊情報

大油断

藤 和彦 著
四六判並製 240頁
定価:1,600円+税
ISBN:978-4-910818-15-3

 

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無極化する世界で、第五次中東戦争が勃発すれば、原油の9割を中東に依存する日本はすぐさま未曾有のエネルギー危機に陥る! 元内閣官房内閣情報分析官が最新の世界情勢を精密に分析! 大油断の発生リスクを検証し、現実的解決策を提示する。

戦後の世界は長らく、米国の「正義」が国際社会を牛耳ってきたが、米国が唯一の執行権力(世界の警察官)である地位を放棄した今、国際社会にもはや「正義」は存在しない。

米国という強力なリーダーがいなくなった国際社会では「何が正しいのか」のではなく「国益に資するために何をすべきか」が重要になり、「誰が勝つのか」「誰の側につくべきなのか」という判断ばかりが重視されるようになりうる。国際社会は今後、各国が激しく対立しあう 「学級崩壊」の状態になるのではないだろうか。

バトル・ロワイヤル化した国際社会になれば、軍事力がものを言う。日本にとって国際社会の学級崩壊はマイナス以外の何ものでもない。石油の専門家である著者は、「日本の原油輸入の中東依存度が世界で最も高い」ことが問題だという。

米軍が中東から日本までのシーレーンを守ってくれる」ということを信じて、この危険な状態を続けてきたが、米国が将来、中東地域から足抜けする可能性が生じており、「今後も大丈夫だ」との保証はどこにもない。

故堺屋太一氏が1975年に「油断」という名の小説を出版し、中東地域から原油供給が途絶したことで日本社会が大混乱に陥る様を描いた。日本は2度にわたって石油危機に遭遇しているが、幸いなことに供給途絶に直面したことはない。しかし、中東地域でなにかあれば、「油断」が描いたカタストロフィーが日本で起きる可能性は排除できなくなっている。

「油断」を起こさないためにはどうしたらいいのか? 「学級崩壊」した世界で日本が生き残るためにはどう立ち回ればいいのか?現実的な解決策を具体的に提示する。

 

 

■ 目次

はじめに

第1章 「学級崩壊」が進む国際社会

「経済制裁」という悪手
経済制裁がもたらす深刻な副作用
怒りの声を挙げる発展途上国
軋む国際金融システム
多様化が始まる決済通貨
エネルギー市場の分断
グローバル化の終焉
グローバル化がもたらした西側諸国の地盤沈下
BRICSは対抗軸になるのか
「第2の中国」になれないインド
インドの深刻な公害問題
自業自得」の欧州のエネルギー危機
ロシアが欧州のエネルギー供給元になった経緯
ノルドストリームは米国政府が爆破した?
「欧州の病人」に逆戻りするドイツ
「イージーマネー」時代の終焉
世界経済はグレートデプレッションに陥ってしまうのか
未曾有の経済不況は深刻な政情不安に直結する

第2章 分断が進み、内向き化する米国

世界の安全保障にとって最大の脅威となった米国
愛国心が低下する米国
格差社会から国民総貧困時代へ
国内の最大の脅威となった白人至上主義者
次期大統領選を左右するポピュリズム
米国でファシズム化が進む?
米国で内戦が起きる?
弱体化する米軍
深刻な薬物被害
カネの切れ目が縁の切れ目
中国の「一帯一路」に対する警戒
首脳会談後も米国で高まり続ける「中国脅威論」
米国で「黄禍論」が台頭?

第3章 経済衰退で「地政学リスク」が高まる中国

バブル崩壊後の日本に酷似してきた中国
不動産バブルの崩壊
金融危機の恐れ
「日本化」さえも困難になってきた中国
疑問符がつく中国の競争力
少子化、雇用市場のミスマッチ
高齢者に自殺を強いる社会
民意に鈍感な中国政府
西側諸国との関係を閉ざし始めた中国
中国の統治制度
「ソ連化」に逆戻りする中国
中国は再び動乱の時代になるのか
衰退期入りした中国が高めるアジアの地政学リスク
中国の台湾侵攻のリスクは「ブラックスワン」か
インドとの紛争リスク

第4章 世界の無極化が最悪の石油危機を招く

ウクライナ危機で一気に緊迫化した中東情勢
中東地域から始まった米国外交の落日
米国の中東地域に対する関心の低下
米国のエネルギーモンロー主義
イスラエルとアラブ諸国の国交樹立
サウジアラビアとイランの対立
中国の仲介
中国の中東政策が抱える問題点
中東地域の地政学リスク
湾岸産油国で「アラブの春」が発生?
過去最高水準の中東依存度
石油危機を振り返る
石油危機の本質
小説『油断!』
オワコンとなった原油
国家石油備蓄は大丈夫か
中東依存から米国依存へ

第5章 日本が生き残るためにはどうするか

グローパル化のハードランディングに備える
「鎖国」再考
日本が生き残るために
日本にとっての最悪のシナリオ
油断回避の原油安定供給プラン

おわりに

 

■著者 藤 和彦(ふじ・かずひこ)
元内閣官房内閣情報分析官。
1960 年、愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。エネルギー政策などの分野に携わる。1998 年、石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)。2003 年、内閣官房出向、内閣情報調査室内閣参事官及び内閣情報分析官(グローバルシステム担当)。2011 年、公益財団法人世界平和研究所(中曽根研究所)出向、主任研究員。2016 年から独立行政法人経済産業研究所上席研究員。2021 年から同コンサルテイングフェロー。 主な著書に『日露エネルギー同盟』(エネルギーフォーラム)、『原油暴落で変わる世界』(日本経済新聞出版)、『石油を読む第3版』(日本経済新聞出版)、『日本発 母性資本主義のすすめ』(ミネルヴァ書房)、『国益から見たロシア入門』(PHP 新書)、『ウクライナ危機後の地政学』(集英社)、『人は生まれ変わる』(ベストブック)などがある。