書 籍

方丈社書籍

マンガでわかる 日本の食の危機

原作・監修 鈴木宣弘
マンガ マンガデザイナーズラボ
四六判並製 248頁
定価:1,500円+税
ISBN:978-4-910818-08-5

 

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「この経済大国・日本で飢餓なんてありえない!」「日本ほど、食の安全が大切にされている国はない」あなたはそうお思いでしょうか。しかし、残念ながらどちらも完全な間違いです。今、日本は食に関してかつてないほど「本質的な危機」に直面しています。危機には、「量」と「質」の両面があります。「量の危機」とは、文字通り日本人が生存を保てるだけの食品、食料品を確保できず、飢えるという意味です。食料自給率は、先進国中最低レベルの38%と言われますが、実態ははるかに厳しく、実質10%程度です。それは、野菜等の種、そして化学肥料の原料、家畜の飼料などの多くを輸入に依存しているからです。

世界では、「食料は最も安上がりな武器」として認識され、各国とも自国民への食料供給を最優先課題として厳しく戦略的に動くのが食料安全保障の基本です。しかし、日本はこの部分が完全にないがしろにされ、「自動車輸出」の枠を確保するために、食と農業を人質として生殺与奪の権を明け渡してきてしまいました。「自分で作ることはない、お金を出して買えば済むのだから」と、勘違いしていたのです。自国民の命を守る根幹を他国に委ねるという矛盾が「異常気象」「コロナ禍」「中国の食料爆買い」「ロシア、ウクライナ戦争」というクワトロ・ショックによって最高潮に達しているのが現状です。

一方、「質の危機」も深刻です。日本は他国からの干渉で農薬の残留基準値をどんどん緩和し、酪農での成長ホルモン規制や遺伝子組み換え作物、ゲノム編集作物に対する規制も輸入品に関してはザルで、最も厳格なEU圏や意識の高まっている北米、豪州、そして中国などより危険な食品を食べているのです。そして、規制を厳しくした国に輸出できなくなった世界中の食品は、全て日本に回ってくる。つまり農薬漬けや遺伝子組み換え食品の最終処分場のように扱われています。少子化やがん死の増大に食の質の低下が影響しているのではないかとの声もあり、次世代、次々世代に対する責任が問われています。

本書のストーリーは、稲垣家の家族たちと鈴木教授との関係の中で進行します。主な登場人物は、母親=美穂(主婦)、父親=大輔(スーパーマーケット勤務)、長男=修斗(農学部に通う学生、鈴木教授のファン)、長女=穂波(小学5年生)、美穂の伯父=松任谷角栄(近郊で専業農家をしている)、鈴木宣弘教授。日本に現実に迫っている食の「量」と「質」の危機に関して無知・無自覚だった美穂が、修斗の影響で次第に現実に気づき、学び始めることで、悩みつつ解決策を求めていく。その過程で鈴木教授とも知遇を得、やがて家族全員に大きな変化が起きるようになります。

マンガのストーリーは9話で展開し、それぞれのテーマに合わせた内容を、鈴木教授とマンガのキャラクターのやりとりで補足する構成。現在の行政の中で苦しんでいる酪農家の方への取材なども行い、日本が直面している課題をリアルに伝える形になっています。深刻な現実を変えることができるのは、読者であるあなただけです。

 

 

■ 目次

はじめに
主な登場人物
第1章 不安
もう始まっている食糧危機


鈴木教授の特別講義1
日本の本当の食料自給率は、現時点でも10%程度?
「クワトロ・ショック」で世界食料危機のスイッチが入った
食料自給率の低い国では、自国民を守れない

第2章 「量」も「質」も危ない
誰も知らなかった日本の食の現実


鈴木教授の特別講義2
「日本の食は美味しくて安全」は、幻想だった?
遺伝子組み換え大豆ができるまで
世界中で使用禁止の農薬を、日本だけ規制緩和する謎

第3章 悪い夢
コオロギ食と野菜嫌い


鈴木教授の特別講義3
食品・食料品価格高騰より大きな「本当の問題」とは?
「減反せよ」「牛乳捨てろ」の一方で昆虫食推進とは?
日本の農業に関して信じ込まされてきた「ウソ」とは?
日本が食料を自給できなくなったのは、なぜ?

第4章 安全か利益か
農家が直面している現実


鈴木教授の特別講義4
「日本の農業は甘やかされている」というウソ
食管法廃止
1993年ガット(GATT)ウルグアイ・ラウンドと平成米騒動の不幸な影響
世界一過酷な条件下で戦っているのが日本農業の本当の姿

第5章 気づき
ホンモノの味と出合うこと


鈴木教授の特別講義5
日本の「農」を潰そうとする者の正体
なぜ、農協改革という名の解体を目論むのか
「危険なものは日本人に食べさせておけばいい」とは?

第6章 安全幻想の終わり
標的にされていた日本の食卓


鈴木教授の特別講義6
狙われている日本の食卓……コオロギ、GMO、成長ホルモン
日本人はなぜ長い歴史の中でコオロギを食用にしなかったのか?
「昆虫食推進」を仕掛けたのは誰で、その狙いは?
コオロギ食にきちんと抗うイタリア政府の見事さ
遺伝子組み換えとゲノム編集の違いは?

第7章 酪農、ヤバいです!!!
今日も続く過酷すぎる現実


鈴木教授の特別講義7
日本は安全でない食品の最終処分場?
知らずに食べさせられている成長ホルモン牛の危険性
世界中は「NO!」なのに日本の輸入はザル?
世界の消費者は戦っている、でも日本は?
日本を取り戻さない限り、未来はない

第8章 転機
「本当のこと」を知ったとき、何が見えてくるか?


鈴木教授の特別講義8
「牛たちは生きてるんです。モノじゃないんです!」
霞が関に響いた魂の叫び 千葉の酪農家・金谷雅史さんへのインタビュー
金谷牧場の原点とは
「牛たちは生きている。逃げるわけにいかない」酪農を継いだ決断の日
祖父、父から受け継いだ魂を次に伝える。だから負けない

第9章 笑顔のある明日へ
自分が動けば、変えられる


鈴木教授の特別講義9
光に向けて日本の食と農業を救う道
「失われた30年」の間に急解体された日本の農業
未知のゲノム編集を野放しで解禁にした意味日本人は実験台?
「安い食べ物」には理わ由けがある
タネ=未来を取り戻すことの重要性
最優先で農家・酪農家の危機を救うべき
地産地消の循環農法をめざす

おわりに
一般財団法人 食料安全保障推進財団について
参考文献

 

■原作・監修 鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)
1958年三重県志摩市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科教授。1982年東京大学農学部農業経済学科卒業後、農林水産省に入省。九州大学大学院教授などを経て、2006年より現職。コーネル大学客員教授、食料・農業・農村政策審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、国際学会誌Agribusiness編集委員などを歴任。食料安全保障推進財団・理事長。著書は2022年食農資源経済学会学会賞を受賞した『協同組合と農業経済学 共生システムの経済理論』(東京大学出版会)、一般書としては『食の戦争』(文春新書)、『農業消滅』(平凡社新書)、『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社+α新書)など多数。

 

■マンガ マンガデザイナーズラボ
マンガとグラフィックデザインを組み合わせた「マンガデザイン🄬」という日本オリジナルの表現手法で、官公庁や国内外の企業の広告・広報・ブランディングを手がけています。「笑顔をプロデュース」を理念に掲げ、発想力と企画力で、デザイン・映像・WEBサイト・ストーリーマンガ制作・オリジナルサイト運営などを提供するプロデュース集団です。