「監督が怒ってはいけない大会」にやってきた「それでも怒らない」人々
「監督が怒ってはいけない大会」にやってきた
「それでも怒らない」人々
バレーボール元日本代表の益子直美さん、北川美陽子さん、北川新二さんが主宰する「監督が怒ってはいけない大会」は、好評のうちに10周年を迎え、バレー以外でもサッカー、水泳、空手、バスケットボールなど、全国各地にそれぞれの「怒ってはいけない大会」が広がっています。
その大会に賛同し、参加する元日本代表のアスリートのみなさん、地元で「怒ってはいけない大会」を熱心に開催するみなさんたちの、スポーツを通して子どもたちに「楽しむ!」「怒らない!」「チャレンジする!」を体現する姿を紹介します。
益子直美さんメッセージ
「監督が怒ってはいけない大会」は本当にたくさんの人に支えられています。元日本代表のアスリートの集団、HEROsのみなさんや、それぞれの土地で大会を運営する実行委員会のみなさん。とくにHEROsのアスリートたちは、子どもたちと一緒になって走り回り、汗をかき、夢までも授けてくれます。みんな、子どもたちを笑顔にするために本当に一生懸命支えてくれて、とてもありがたい存在です。そんなみなさんの素敵なお話を紹介します。
「監督が怒ってはいけない大会がやってきた」
一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会
(益子直美 北川美陽子 北川新二) 著
四六判並製 256頁
定価:1,600円+税
ISBN:978-4-910818-12-2
書籍紹介
聞き手・鈴木靖子
撮影・落合星文
それでも怒らない人 番外編
マルチ・スポ★カルDAY with 監督が怒ってはいけない大会
「監督が怒ってはいけない大会」は、バレーボールだけでなく、水泳やサッカー、ハンドボールなど他競技に広がりを見せていますが、同時に、既存の活動とのコラボレーションも行なっています。
2025年6月28日(土)・29日(日)に開催された「マルチ・スポ★カルDAY with 監督が怒ってはいけない大会」も、長野県飯田市の取り組み「エンジョイスクエア」とのコラボイベントでした。
「エンジョイスクエア」は、長野県飯田市、下伊那郡の地域の人たちや企業が協力して80種目以上の文化芸術やスポーツを体験できる環境を用意。毎年、夏と冬の年2回、講座が開催され、子どもたちの「やってみたい!」をサポートするプロジェクトです。
中学校部活動の地域移行という社会課題に対する取り組みでもあり、複数のスポーツを同時に体験する「マルチスポーツ」の推進にもつながると、全国的にも注目を集めています。
そのエンジョイスクエア2025年夏のオープニングイベントとして、開催されたのが「マルチ・スポ★カルDAY with 監督が怒ってはいけない大会」なのです。
自分の言葉で伝える選手宣誓も大成功!
1日目は、飯田市立飯田東中学校を会場にした「マルチ・カルチャーDAY」です。校内の各所で、ダンスやeスポーツ、和太鼓、ハンドベル、書道&水墨画、昆虫/クワガタなど17のクラブが集まり、体験できる催しが開かれました。
子どもたちに混じって、監督は怒ってはいけない大会の面々も会場に散ります。クワガタとカブトムシのブリーディングにハマっていた過去のある北川新二さんは、昆虫/クワガタのブースに直行します。
益子さんは水墨画やハンドベルを楽しみます。そしてなんと、開会式では和太鼓クラブのパフォーマンスのオープニングアクトとなる「打ち出し」にもチャレンジしました!
大きく足を開いてスタンスをとり、バチを天に突き上げ、腰とともに振り下ろし……練習時間はわずかでしたが、みごとに力強い音を響かせていました。
そして、開会式の後は、益子さんのスペシャルトークです。
「監督が怒ってはいけない大会」はどんな大会なのか。
人間力を育てるすばらしいツールであるスポーツの“副作用”とは何か。
困難や危機に直面し、落ちてしまったメンタルをゼロに戻すだけでなく、回復して成長に変える力——「レジリエンス」を育む必要性。
「スポーツマン」の本来の意味と、スポーツマンシップの3原則「尊重」「勇気」「覚悟」について。
子どもたちも保護者や視察の大人たちも、益子さんの言葉に耳を傾けます。
そして、スポーツマンシップについておしたあとは、監督が怒ってはいけない大会恒例の「自分の言葉で伝える選手宣誓」です。みんなが静かに目を伏せる中、勇気を出して手を挙げてくれたのは男子2人組でした。
「僕たち/私たちはスポーツマンシップを守り、みんなが楽しくスポーツができるように全力を尽くします」
その後、1人の女の子が益子さんのほうを向き、まっすぐに手を挙げてくれました。
「僕たち/私たちは相手のことを尊重し、ルールを守り合い、周りに尊敬されるような選手になれるようにがんばることを誓います」
自分で考えること、主体的に行動を起こすこと、挑戦をおそれないこと。益子さんのメッセージは子どもたちにしっかり届いていたようです。
まさかの!? バッテンマスク登場!
2日目は「マルチ・スポーツDAY」です。飯田市総合運動場/飯田勤労者体育センターで、スポーツのミニゲーム大会が始まります。
行なわれたのは、走ってはいけない「ウォーキングサッカー」に、やわらかなボールをつかった4人制の「ソフトバレーボール」、タックルの代わりに腰の真横につけたひも(タグ)を取る「タグラグビー」の3競技です。
スポーツをやっている子だけでなく、走ることやボールの扱いが苦手な子も楽しめるルールで、グラウンドや体育館に、子どもたちの歓声が響きます。
最後の種目「タグラグビー」では、「早く〜並べ〜!!!」との大人の声に、子どもたちから「怒った〜!!」とチェックが入ります。すかさず、益子さんがバッテンマスクを取り出して……子どもたちは大はしゃぎ、周囲の大人はシャッターチャンスとばかりに駆け寄ります。「監督が怒ってはいけない大会」ではあまり見かけることのなくなった、珍しいシーンを見ることができました。
タグラグビーが終わり、閉会式をして子どもたちは解散します。名残惜しいのか、益子さんに挨拶したい子どもたちの列ができていました。
2日間で感じたのは、どんなスポーツだろうと、何をやろうとも、やっぱり「真剣で一生懸命」は、子どもたちの笑顔を引き出すということです。
1日目だけの参加予定が、「楽しすぎて、明日も行きたい!」と、誕生日を迎えた父親とのお出かけをキャンセルして2日目もやってきた子どもがいました。または、「少しは運動をしてほしい……」と願う親から「『Switch 2』を買ってあげるから……」と懇願されての参加だったけれど、けっきょく汗だくになるほど目いっぱい楽しんだ子どももいて、たいへん盛り上がりました。
そんな子どもたちを見る保護者の表情もまた晴れやかで、とてもうれしそうなのが印象的でした。
エンジョイスクエア実行委員会・代田昭久さんのコメント
エンジョイスクエアは楽しいことを軸にいろいろなことに挑戦して、子どもたちの可能性を伸ばすというのがコンセプトです。益子さんとは以前から交流があり、エンジョイスクエアも『監督が怒ってはいけない大会』も同じ理念だよねと盛り上がり、今回、コラボさせていただきました。
「やりたい」ことにチャレンジする好奇心はとても大切ですし、スポーツでも文化でも一歩を踏み出し、活動することで家や学校、塾だけではないまったく別のコミュニティをつくるきっかけにもなります。その意味はとても大きいと思っています。
エンジョイスクエア2025年度夏は、申込開始からわずか数日で600人以上の申し込みがありました。『マルチスポカルDAY』の2日間も子どもたちの笑顔にあふれていました。これからも、子どもたちの満足度を高めていきながら活動を続けていきたいと思っています。
益子直美さんのコメント
この2日間で、私自身、新しいことにたくさんチャレンジさせていただきました。とくに、太鼓の打ち出し! 昔の私だったら、失敗したら恥ずかしいとチャレンジを避けていたか、あるいは、おちゃらけて適当にごまかしていたかもしれません。翌日はものすごい筋肉痛でしたが、それも含め、「真剣にがんばる」「真剣だから楽しい」を体感することができました。いくつになっても挑戦できるし、成長できるのです。
飯田市のエンジョイスクエアは子どもたちが主体的に楽しむ場があり、それを地域のみなさんが支えるとても素敵な取り組みで、以前から注目していました。今回、コラボレーションをさせていただき、地域での子どもたちとのつながり方やスポーツの苦手な子たちへのアプローチ、そしてマルチスポーツの展開のしかた……いろいろ考えさせられた2日間でした。
じつは、「監督が怒ってはいけない大会」では、2026年3月、マルチスポーツのイベントを東京で開催することが決定! 今回の「マルチ・スポ★カルDAY with 監督が怒ってはいけない大会」からも刺激とヒントをもらったようです。どんなイベントになるかはまだこれからだそうですが……子どもたちの笑顔があふれる楽しいイベントになることは、まちがいないはずです。