「監督が怒ってはいけない大会」にやってきた「それでも怒らない」人々

「監督が怒ってはいけない大会」にやってきた
「それでも怒らない」人々

バレーボール元日本代表の益子直美さん、北川美陽子さん、北川新二さんが主宰する「監督が怒ってはいけない大会」は、好評のうちに10周年を迎え、バレー以外でもサッカー、水泳、空手、バスケットボールなど、全国各地にそれぞれの「怒ってはいけない大会」が広がっています。
その大会に賛同し、参加する元日本代表のアスリートのみなさん、地元で「怒ってはいけない大会」を熱心に開催するみなさんたちの、スポーツを通して子どもたちに「楽しむ!」「怒らない!」「チャレンジする!」を体現する姿を紹介します。


益子直美さんメッセージ

「監督が怒ってはいけない大会」は本当にたくさんの人に支えられています。元日本代表のアスリートの集団、HEROsのみなさんや、それぞれの土地で大会を運営する実行委員会のみなさん。とくにHEROsのアスリートたちは、子どもたちと一緒になって走り回り、汗をかき、夢までも授けてくれます。みんな、子どもたちを笑顔にするために本当に一生懸命支えてくれて、とてもありがたい存在です。そんなみなさんの素敵なお話を紹介します。

※HEROs
日本財団が運営する「HEROs Sportsmanship for the future(HEROs)」プロジェクト。元日本代表などのアスリートが、災害復興支援・難病児支援・少年院更生支援など、全国のさまざまな社会課題の現場で、取り組みの輪を広げようと活動しています。

「監督が怒ってはいけない大会がやってきた」
一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会
(益子直美 北川美陽子 北川新二)  著
四六判並製 256頁
定価:1,600円+税
ISBN:978-4-910818-12-2
書籍紹介



聞き手・鈴木靖子
撮影・落合星文


「監督が怒ってはいけない大会」が、スポーツ安全協会主催「ファン・スポーツ・ネクサス」へ参加しましたリポート

それでも怒らない人 10 _東京


子どもたちがお休みとなり、気候も穏やかな春休みは「監督が怒ってはいけない大会」のハイシーズンです。
3月7日は岩手県一関市でジュニアフットサルフェスティバル「はなまるカップ」とのコラボ大会があり、その2週間後には山口県周南市でバレーボール大会が開催されました。山口大会は今年で5回目を数え、今年はなんと約250人もの子どもたちが参加。低学年の子がたった一人で立派な選手宣誓を披露するなど今回も笑顔と感動あふれる大会となりました。

そして、週が明けての3月24日(火)〜25日(水)は、東京・渋谷で開催された「fun sport nexus(ファン・スポーツ・ネクサス)」への参加です。
公益財団法人スポーツ安全協会が主催するこのイベントは、部活動の地域展開など子どもたちのスポーツをめぐる環境が変化する中、スポーツの原点である「楽しむきっかけ」を提供することを目的に企画されました。


会場となった国立オリンピック記念青少年総合センターの各所では、スポあんぱん食い競争やフェンシング、ボッチャ、バスケットボール、ダブルダッチ、ブレイキンやダンスなど、さまざまなスポーツや文化の体験会が行われました。

「監督が怒ってはいけない大会」がプロデュースするのは、ソフトバレーボール体験会です。
ソフトバレーボールは軽くて柔らかなボールを使うため、安全でラリーが続きやすいのが特徴。
ソフトバレーボールに触れて、バレーボールの楽しさを知ってもらおう! というのが狙いです。

「監督が怒ってはいけない大会」の“レギュラーHEROs”の一人、元アーティスティックスイミング日本代表の杉山美紗さんが助っ人として参加し、1回50分の体験会を3回行ないました。


参加してくれた子どもたちのほとんどが、初めてバレーボールに触れる子どもたちです。
軽くウォーミングアップをしたら、オーバーハンドパスの練習からスタートです。
一列に並んだ子どもたちに、美陽子さんと杉山さんが順番に球出しをします。益子さんは「やさしく〜やさしくね〜」とアドバイスします。
続いて、スパイクの練習。最初はジャンプなしでボールに手を当てるコツをつかみ、慣れてきたらジャンプを加えての挑戦です。
「バンッ! って音が鳴るとかっこいいよね。そのためにはね……」と美陽子さんから具体的なアドバイスが飛びます。

「ナイス〜♪」
「あぁ〜おしぃ〜」
益子さん、杉山さん、美陽子さん、北川さんの4人が一人ひとりのプレーを見守り、応援します。
そんな温かいかけ声に後押しされてか、子どもたちはみるみる上達していきます。
最初はボールに触れるのも難しかった子が、ほどなくボールをネットの向こうへ飛ばせるようになるのだから驚きます。

もっとも盛り上がったのは、「美女を狙うか、くまさんを狙うか」チャレンジです。エンドラインの左右に立つ杉山さんと北川さん、どちらを狙うかを宣言してサーブを打つのです。杉山さんと北川さんのリアクションも楽しく、歓声が上がります。イメージどおりにボールが飛べば、ジャンプして喜び、失敗したときは全力で悔しがる。そんな子どもたちの姿を見ることができました。


50分間の練習を終えると、大人たちはもうへとへとです。でも、子どもたちにとっては、少々物足りなかったようでした。名残り惜しそうにトスのフォームを繰り返しながら体育館を後にする子がいれば、予定を変更して次の回に続けて参加してくれる子もいました。

「うちの子、今日は本当に楽しそうで……あのボールはどこで買えるのでしょうか?」
そう北川さんに尋ねる保護者の方もいました。

いつもの「監督が怒ってはいけない大会」とは、少々、趣の異なるイベントではありましたが、益子さんの心に残るものは小さくなかったようです。

「バレーボール経験のない子もたくさんいましたが、『もっとやりたい!』『もっとやりたい!』と、楽しそうにボールを追いかけてくれました。楽しいからスポーツを始め、上達することがうれしくてそれがまた楽しくて、『もっと!』と思える。スポーツの入り口はやっぱり“楽しい”にあると改めて感じました」

スポーツと出会うきっかけが子どもたちの「楽しさ」なら、スポーツを長く続ける理由となるのもまた「楽しさ」です。それはまさに、「監督が怒ってはいけない大会」が大切にしている「真剣で楽しい」です。

まだまだ続く、春休みのハイシーズン。
4月には東京・立川市での水泳大会に、埼玉・深谷市でのバレーボール大会が開催されます。
子どもたちの未来につながる「楽しい」が理不尽な指導で潰されないよう——「監督が怒ってはいけない大会」、これからも活動は続きます。



これまでの内容はこちら