書 籍

方丈社書籍

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

内田洋子 著
四六並製仮フランス装 オールカラー350頁
定価:1,800円+税
ISBN:978-4-908925-29-0

 

 

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語
イタリア、トスカーナの山深い村から、
本を担いで旅に出た人たちがいた。
ダンテ、活版印刷、禁断の書、ヘミングウェイ。
本と本屋の原点がそこにある。

 『Webでも考える人』(新潮社)
連載エッセイ《イタリアン・エクスプレス》
本の行商人の子孫たち

本と山村と老婦人

書店の話

 

内田洋子 モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語 特設ページへ

内田洋子 新連載「本に書かれていないモンテレッジォ」


書評続々掲載!

読売新聞(5/7 インタビューより)
「現在のインターネットに匹敵するような情報網を担ったのが、モンテレッジォの本の行商人でした」

中日・東京新聞(5/20 中村浩子氏)
「この村の物語は、本の来し方、行く末とも重なる」

毎日新聞(5/20 今週の本棚)
「しかし読後に感じるのは、過ぎた時代への憧憬ではなく、
『本』はこれからも人を照らし続けるという希望ではないか」

・BURRN!(6月号 古屋美登里氏)
「内田がモンテレッジォを発見したのではなく、モンテレッジォのほうが彼女を発見し、呼び寄せた」

・日経ビジネス(5/21号 武田砂鉄氏)
「知らなかったことを知ろうとする時、本はいつだって新鮮な酸素であり続ける」

サンデー毎日(5/27号 岡崎武志氏)
「美しいカラー写真とともに、我々も、『本と本屋の原点』へ誘われていくのだ」

週刊新潮(5/31号 成毛眞氏)
「ゆったりと遊ぶように、しかし真面目に人と歴史と向き合う愉悦を知ることができる美しい本だ」


反響続々!全国書店でランキング入り!

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三省堂書店神保町本店ノンフィクション部門第2位&文学ノンフィクション部門第6位!
(2018.4.20 撮影)

 

 

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東京堂書店週間ランキング第6位!
(2018.4.12 撮影)

 

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丸善丸の内本店フィクション部門第4位!
(2018.4.16 撮影)


 目次

はじめに 
 1 それはヴェネツィアの古書店から始まった
 2 海の神、山の神
 3 ここはいったいどこなのだ
 4 石の声
 5 貧しさのおかげ
 6 行け、我が想いへ
 7 中世は輝いていたのか!
 8 ゆっくり急げ
 9 夏のない年
10  ナポレオンと密売人
11  新世界に旧世界を伝えて
12  ヴェネツィアの行商人たち
13  五人組が時代を開く
14  町と本と露店商賞と
15  ページに挟まれた物語
16  窓の向こうに
あとがきに代えて 本が生まれた村

 

(『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』本文より)
はじめに
                                  内田洋子

 いつか読もう、と積んだまま忘れられている本はないだろうか。
 ある日ふと読み始めてみると、面白くてページを繰る手が止まらない。玉手箱の中から、次々と宝物が飛び出してくるような。
 モンテレッジォ村は、そういう本のようだ。本棚の端で、手に取られるのを静かに待っている。
 薦めてくれたのは、ヴェネツィアの古書店だった。とても居心地の良い店である。寡黙で穏やかな店主はまだ若いのに、客たちの小難しい注文を疎(うと)まずに聞き、頼まれた本は必ず見つけ出してくる。
〈ただ者ではないな〉
 店主と客たちの本を介したやりとりに魅かれ、買わなくても寄る。たいした棚揃えに感嘆し、修業先を尋ねると、
「代々、本の行商人でしたので」
 根を辿(たど)ると、トスカーナ州のモンテレッジォという山村に原点があるという。
「何世紀にも亘(わた)り、その村の人たちは本の行商で生計を立ててきたのです。今でも毎夏、
村では本祭りが開かれていますよ」
 驚いた。
 籠(かご)いっぱいの本を担(かつ)いで、イタリアじゅうを旅した行商人たちがいただなんて。そのおかげで各地に書店が生まれ、〈読むということ〉が広まったのだと知った。
 なぜ山の住人が食材や日用品ではなく、本を売り歩くようになったのだろう。
 矢も盾もたまらず、村に向かった。
 実に遠かった。鉄道は果て、その先の石橋を渡り、山に登り、人に会い、古びたアルバムを捲(めく)って、山間の食堂で食べ、藪(やぶ)を歩き、教会の鐘の音に震え、川辺の宿に泊まった。
 見知らぬイタリアが、そこここに埋もれていた。
 人知れぬ山奥に、本を愛し、本を届けることに命を懸けた人たちがいた。
 小さな村の本屋の足取りを追うことは、人々の好奇心の行方を見ることだった。これまで書き残されることのなかった、普通の人々の小さな歴史の積み重なりである。
 わずかに生存している子孫たちを追いかけて、消えゆく話を聞き歩いた。
 何かに憑(つ)かれたように、一生懸命に書いた。

 

 

 ◆著者 内田洋子(うちだ・ようこ)

ジャーナリスト。イタリア在住。
1959年神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。
通信社ウーノ・アソシエイツ代表。2011年『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞。
著書に『ジャーナリズムとしてのパパラッチ イタリア人の正義感』『ミラノの太陽、シチリアの月』『イタリアの引き出し』『カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想』『皿の中に、イタリア』『どうしようもないのに、好き イタリア 15の恋愛物語』『イタリアのしっぽ』『イタリアからイタリアへ』『ロベルトからの手紙』『ボローニャの吐息』『十二章のイタリア』『対岸のヴェネツィア』。
翻訳書にジャンニ・ロダーリ『パパの電話を待ちながら』などがある。
『Webでも考える人』連載エッセイ 《イタリアン・エクスプレス》