書 籍

方丈社書籍

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

内田洋子 著
四六並製仮フランス装 オールカラー350頁
定価:1,800円+税
ISBN:978-4-908925-29-0

 

 

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語
イタリア、トスカーナの山深い村から、
本を担いで旅に出た人たちがいた。
ダンテ、活版印刷、禁断の書、ヘミングウェイ。
本と本屋の原点がそこにある。

 『Webでも考える人』(新潮社)
連載エッセイ《イタリアン・エクスプレス》
本の行商人の子孫たち

 

 

反響続々!全国書店でランキング入り!

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三省堂書店神保町本店ノンフィクション部門第2位&文学ノンフィクション部門第6位!
(2018.4.20 撮影)

 

 

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東京堂書店週間ランキング第6位!
(2018.4.12 撮影)

 

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丸善丸の内本店フィクション部門第4位!
(2018.4.16 撮影)

 目次

はじめに 
 1 それはヴェネツィアの古書店から始まった
 2 海の神、山の神
 3 ここはいったいどこなのだ
 4 石の声
 5 貧しさのおかげ
 6 行け、我が想いへ
 7 中世は輝いていたのか!
 8 ゆっくり急げ
 9 夏のない年
10  ナポレオンと密売人
11  新世界に旧世界を伝えて
12  ヴェネツィアの行商人たち
13  五人組が時代を開く
14  町と本と露店商賞と
15  ページに挟まれた物語
16  窓の向こうに
あとがきに代えて 本が生まれた村

 

(『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』本文より)
はじめに
                                  内田洋子

 いつか読もう、と積んだまま忘れられている本はないだろうか。
 ある日ふと読み始めてみると、面白くてページを繰る手が止まらない。玉手箱の中から、次々と宝物が飛び出してくるような。
 モンテレッジォ村は、そういう本のようだ。本棚の端で、手に取られるのを静かに待っている。
 薦めてくれたのは、ヴェネツィアの古書店だった。とても居心地の良い店である。寡黙で穏やかな店主はまだ若いのに、客たちの小難しい注文を疎(うと)まずに聞き、頼まれた本は必ず見つけ出してくる。
〈ただ者ではないな〉
 店主と客たちの本を介したやりとりに魅かれ、買わなくても寄る。たいした棚揃えに感嘆し、修業先を尋ねると、
「代々、本の行商人でしたので」
 根を辿(たど)ると、トスカーナ州のモンテレッジォという山村に原点があるという。
「何世紀にも亘(わた)り、その村の人たちは本の行商で生計を立ててきたのです。今でも毎夏、
村では本祭りが開かれていますよ」
 驚いた。
 籠(かご)いっぱいの本を担(かつ)いで、イタリアじゅうを旅した行商人たちがいただなんて。そのおかげで各地に書店が生まれ、〈読むということ〉が広まったのだと知った。
 なぜ山の住人が食材や日用品ではなく、本を売り歩くようになったのだろう。
 矢も盾もたまらず、村に向かった。
 実に遠かった。鉄道は果て、その先の石橋を渡り、山に登り、人に会い、古びたアルバムを捲(めく)って、山間の食堂で食べ、藪(やぶ)を歩き、教会の鐘の音に震え、川辺の宿に泊まった。
 見知らぬイタリアが、そこここに埋もれていた。
 人知れぬ山奥に、本を愛し、本を届けることに命を懸けた人たちがいた。
 小さな村の本屋の足取りを追うことは、人々の好奇心の行方を見ることだった。これまで書き残されることのなかった、普通の人々の小さな歴史の積み重なりである。
 わずかに生存している子孫たちを追いかけて、消えゆく話を聞き歩いた。
 何かに憑(つ)かれたように、一生懸命に書いた。

 

 

 ◆著者 内田洋子(うちだ・ようこ)

ジャーナリスト。イタリア在住。
1959年神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。
通信社ウーノ・アソシエイツ代表。2011年『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞。
著書に『ジャーナリズムとしてのパパラッチ イタリア人の正義感』『ミラノの太陽、シチリアの月』『イタリアの引き出し』『カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想』『皿の中に、イタリア』『どうしようもないのに、好き イタリア 15の恋愛物語』『イタリアのしっぽ』『イタリアからイタリアへ』『ロベルトからの手紙』『ボローニャの吐息』『十二章のイタリア』『対岸のヴェネツィア』。
翻訳書にジャンニ・ロダーリ『パパの電話を待ちながら』などがある。
『Webでも考える人』連載エッセイ 《イタリアン・エクスプレス》