40歳をすぎたあなたが結婚をつかむための17か条(back02)

40歳をすぎたあなたが
結婚をつかむための17か条 超実践編


第1回(2021.04.26)

「あなたのように生きたい」と思える人はいますか?

 お久しぶりです。49歳8か月にして結婚を果たした桜野かほりです。連載を読んでくださったあなた、結婚をつかみましたか?
 私はもうじき、結婚6年目に突入しますが、今も夫とはラブラブです。むしろ、日が経つほどに仲良くなってきていることを実感しています。コロナ禍でステイホームを余儀なくされる毎日ですが、3年前に飼い始めたうさぎと夫と3人(?)で同じ空間にいるだけで幸せ。おかげで幸せ太りが加速しております。
 さて、「40歳をすぎたあなたが結婚をつかむための17か条」の続編をスタートすることとなりました。今度は、「超実践編」!。心理学と実体験と友人・知人のエピソードなどをベースにした、結婚に近づくための具体策をご紹介し、「既婚者」という甘い響きに酔いしれる未来へと、あなたを導きます。
 第1回目のテーマは、「『あなたのように生きたい』と思える人はいますか?」です。

 カウンセラーの先輩のSさんは、非常に優秀ながらかわいらしい女性。今から20年ほど前、彼女から恋愛心理学のレクチャーを受けていたとき、ご自身の結婚について話してくれました。20代前半で結婚したSさん。ご主人とは高校の同級生だったそうです。高校時代、彼から告白されたSさん。その際、彼女はこんなセリフを口にしました。
「私は、あなたのように生きたいと思う。あなたは?」

 Sさんは彼のことを、人としてリスペクトしていました。自分も彼のような生き方をしたい。そんなふうに思っていたそうです。で、出た言葉がこれ。彼からは自然にこう返答されたそうです。
「うん。僕もだよ。僕もキミのように生きたいと思う」

 高校生の会話、それも愛の告白シーンとは思えない言葉のセレクトです。このエピソードを聞いたとき、私はあまりに驚き、感動して、言葉が出ませんでした。同時に、自分はなんと子供なのかと、自らを恥じ入りました。

 夫婦は似てくる、とよく言います。言葉遣い、好きな食べ物、見る映画やテレビ番組、寝方や休み方などなど、好みやライフスタイルが一緒に過ごすうちに似てくるのです。中には雰囲気や顔がどことなく似てくる夫婦もいます。
 新婚のころ、夫とのけんかが多くて悩んでいた私に、「新婚時代って、全然幸せじゃないですよね」と、とある男性カウンセラーが言ってくれました。彼もまたそうだったと。
 赤の他人が一緒に生活するわけですから、最初のうちはお互いのやり方があれやこれや違うことが目につきます。食べる前に「いただきます」を言う家庭で育った夫VS言わない家庭で育った私。帰宅したら今日のできごとをなんでも話すべきと思っている夫VSなんでも話せばいいと思っているわけではない私。几帳面な夫VSおおざっぱな私。納豆はほぼかき混ぜない夫VS100回かき混ぜたい私……。
 日々の習慣や考え方の違いに愕然としながらも我慢していた私。一方の夫は「言わなければわからない」という考え方なので、その都度文句を言ってきます。自分の価値観はおろか親までも否定されたように感じた私は逆ギレし、けんかに発展。一晩口をきかなかったことも何度かありました。
 こんなんで結婚生活は続くのだろうか?と悩んでいたときに、男性カウンセラーから「新婚時代は幸せなんかじゃない。辛いものだ」と励まされ、とても心強くなったことを、昨日のことのように覚えています。

 しばらくけんかは続きましたが、そのバトルのおかげで、徐々にそれぞれのやり方のいいとこどりをした「我が家のスタイル」が出来上がってきたのです。そうこうするうち、けんかなどどこへやら、似た者同士になっていました。
 言いたいことがあっても我慢をしてしまう私に、「言いたいことは言って! これはけんかじゃないんだよ。言いたいことを言わなくちゃ、お互い理解しあえないんだよ」と、夫はよく言ってくれました。育った家庭の中で本音を言えなかった私にとって、なんでもストレートに言う夫は、まさに「あなたのように生きたい」と思える人でした。けんかを繰り返す過程でその部分も似ることができ、今では私も、言いたいことをちゃんと言える人間になりました。
 Sさんは、父親が大嫌いで、理想の父親を自分の心の中で作り上げ、そのイメージを実の父にかぶせて生きてきたそうです。辛い体験の中、幼少のころから、自分自身が何を求めているのか、どうなりたいのかをよく考えていたのでしょう。だからこそ、迷わずにご主人を選ぶことができたのでしょう。
「あなたのように生きたい」とは、表面上のかっこよさなどではなく、自分が本質的に求める「なりたい姿」なのです。

 あなたは、あなた自身のことをわかっていますか? 何が苦手で、コンプレックスですか? どんな自分になりたいと思っていますか? そこを見つめるのは、しんどい作業かもしれません。でも、見つめなければ、本当の自分とは出会えません。恐れず、自分の心と向き合い、じっくり考えてみましょう。そしてたどり着いた答えこそが、相手選びの判断基準になります。
 あるいは、「この人のように生きたい」と思える人が既にいますか? いるとすれば、その人が運命の人、なのかもしれません。


第2回(2021.05.10)

リモート婚はアリなのか?

 私の知人に、別居婚をしている女性がいます。今のトレンドになぞらえるなら、リモートワークならぬ「リモート婚」になるでしょうか。
 彼女はバツイチ。30歳のときに年下の男性と一度目の結婚。しばらくは楽しく暮らしていましたが、ほどなく離婚。しかし前向きでいつもキラキラしている彼女はめげることなく恋愛を繰り返し、やがて遠距離恋愛をするようになります。東京と北陸とを行き来し、あるときは東京の高級ホテルのプールサイドでシャンパンを傾け、またあるときは北陸の伝統的な祭に着流し姿で参加し……とデートを楽しんでいる様子をSNSにアップし、「結婚にこだわらなくてもふたりでいればこんなに楽しいのよ~」とアピールをしていました。
 しかし、その暮らしにも飽き足らなくなったのでしょうか。あるいは、やはり家族という絆を求めたのでしょうか。彼女は40代後半にして2度目の結婚をすることに。
 海外でこれまたキラキラの挙式をし、その様子を何日にもわたってSNSに投稿。幸せいっぱいの表情を見せていました。しかし日本に戻ってもふたりは遠距離のまま。別居婚という選択をしたのです。
 相手は伝統ある稼業を継いだ身。これまでの常識で考えれば、嫁として稼業を支えるのが一般的な流れになるのでしょうが、仕事ですでに成功を収めている彼女、時代の先を行く彼女にはそういった選択肢はそぐわなかったのでしょう。まさに現代らしい結婚スタイルを選んだわけです。それ以降も、彼女は東京と北陸を行き来し、別々に住んでいる時期はビデオ通話を活用して会話をするという、まさに「リモート婚」を貫いています。 それぞれのライフスタイルを守りながら、定期的に一緒に過ごして時間を共有する。まさにいいとこどりの結婚のカタチなのかもしれません。
 しかし彼女のSNSにご主人の話題が出てくることはごくまれ。ほとんどが仕事や自身のつぶやきや自身の娯楽に関すること。独身時代と変化はありません。幸せかどうかなど他人がとやかく言うことではありませんが、彼女の投稿を目にするたびに、果たして別々に住む結婚をする意義はなんだろう? と考えてしまいます。

 芸能人が別居婚を選び話題になりました。彼女は、一緒に住まないことで自分の心を護れるから、という理由で別居することを選択したようです。
 共に暮らせば相手のすべてが見えてしまう。自分のすべてを相手に見せざるをえない。ひとりの時間も持ちにくい。ペースが乱れる。心に深く入り込み、入り込まれることが苦痛……などなど、さまざまな理由で、どんなに大好きな相手であっても一緒に暮らすのが怖いという人もいます。それを互いに理解し受け入れたうえで心地いい暮らしができるのであれば、別居婚(リモート婚)はうまくいくでしょう。
 私自身も、結婚前は、ひとり暮らしが長かったこともあり「他人と暮らすなんて無理」と思っていました。自分のペースが出来上がっていたこともありますが、なにより人に心の中に深く入り込まれることが嫌でした。だから、「別居婚は理想だなあ」と思っていた時期もありました。
 そんなときに夫と出会ったわけですが、こともあろうに夫は、私の心にドカドカと土足で入り込んできたのです。はじめのうちは抵抗していましたが、それでも彼は、土足で私の心の中を歩き回ることをやめません。ついに私は観念し、少しずつ心を開くようになりました。
 気付けば、私の心は軽くなっていました。見て見ぬふりをしてきた心の傷が彼によって癒され、修復されたのです。さらに、親に満たしてもらえなかった思いを彼が満たしてくれたり、自分の中にいるさまざまなキャラクターを遠慮することなく出せたりと、一緒に暮らしている中でどんどん自分が解放されていくようになりました。

 相手の傷を受け入れ、癒し合い、互いに成長する――。これこそが、結婚の意義なのだと実感しています。一緒に住まなくともそれは実現可能かもしれませんが、共に過ごす時間を重ねて、見たくないものも見せたくないものも共有してこそ得られるものは少なくありません。
 ですから、もしあなたが「別居婚がいい!」と思っているとしたら、それは「逃げ」なのだと自覚したほうがいいのです。「私は何を恐れているのだろう?」ということを探ってみましょう。どんなに嫌でも相手と深く関わり、すべてをさらけ出す。その覚悟がなければ、結婚はうまくいきません。
 リモートワークは便利で効率的である一方、相対して話すことができないがゆえに相手の本音が見えにくかったり、無駄話ができないことで心の距離が離れてしまいがちだと言われています。リモート婚も同じ、ではないでしょうか。


第3回(2021.05.23)

ソロ活の道は結婚に通ず

「ソロ活」「ソロ活女子」なる言葉が流行しています。「ひとりでさまざまな活動を楽しむ」ということを意味する、まさに現代ならではのワードです。
 そもそもこのワードの元祖は、「おひとりさま」。今から20年ほど前、女性ジャーナリストが、「個として自立し、ひとりの時間を楽しもう」ということを提唱し、そのキーワードとして登場したのが、「おひとりさま」でした。
 女性たちが社会で活躍しはじめたものの、まだまだ自由ではない。ひとりで喫茶店にも入れない。ひとりで行動していたら「寂しい人」だと思われる。だから本意ではないけれど群れて行動する。そんな意識が残っていた時代に、ひとりで行動できること=自立を説いたのが、「おひとりさま」だったのです。
 ただ単にひとりでいる人のことを「おひとりさま」だと誤解している人もいますが、本来は独身、既婚者にかかわらず「ひとりを楽しもう」ということを意味していました。個人を尊重する時代の到来とともにそれは進化し、女性ばかりか男性にも「おひとりさま」が浸透していきました。
 一昔前は、女性ひとりで旅館の予約などできませんでした。私も仕事の都合で旅館に予約を入れようとしたのですが、片っ端から断られた経験があります。女性の一人旅は訳ありだから、という理由で、リスクマネジメントとして女性一人客の予約は受け付けないという暗黙のルールがかつては存在したのです。
 それが今やおひとりさま専門焼き肉店、おひとりさま向け旅行プランなどなど、おひとりさま需要に応えた企画を企業は続々と登場させてきています。まさにソロ活天国! いい時代になったと言えるでしょう。

 ソロ活の醍醐味は、誰にも邪魔されず、自分のペースで自分の好きなことを楽しめること、だと言います。「おひとりさま」が生まれた背景には、ひとりの時間を楽しめる人は、誰かと一緒にいる時間もちゃんと楽しめる。だから自立するためにおひとりさまにチャレンジしようよ、という意味合いがあったと理解しています。本当に自立している人は、ソロ活を心底楽しめるのでしょう。
 他人に依存してしまう、ひとりで行動するのがこわい、ひとりでいると周囲の目が気になる、など、ソロ活に抵抗感があるとすると、自立できていないのかもしれません。あなたの中にその要素があるならば、コロナ禍の今こそソロ活にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
 自宅で最高においしいコーヒーの淹れ方をマスターする、ひとり散歩しながら風景の写真を撮ってみる、ひとりカラオケで絶唱する、今まで触ったことのない楽器にチャレンジする……(ちなみに、私はオカリナにチャレンジ中!)。
 外出できないし人に会えないからストレス発散できない、と嘆いている人は少なくありませんが、ひとりで楽しめることはいくらだってあるのです。
 世の中がどんな状況だろうが自分で自分を楽しませることができる人こそが、本当に自立した人。自立している人は、他者に依存せず、いい人間関係を築くことができます。つまり、いい恋愛、結婚ができるということ。ということは、ソロ活をマスターすることでいい結婚に近づける、ということになりますね。
 すでに自立できているあなたも、そうでないあなたも、新たなソロ活にチャレンジしてみては? ソロ活に没頭しているときに、運命の人に出会うという話をよく耳にします。自分で自分を楽しませている姿、思いっきり楽しんでいる姿はキラキラ輝き、人を魅了します。ソロ活をする中で同じ趣味の人と知り合うことだってあります。そんな人とは意気投合しやすいもの。そう、やはり、ソロ活の道は結婚に通ず! なのです。

 さて、私はといえば、独身時代、ひとり旅やひとり飲み、ひとり映画にひとり水族館、ひとりでアウトドア活動に参加など、ソロ活を積極的にしていました。が、結婚した今は、まったくしていません。たまにひとりの時間が欲しいと思いますが、それでもあえてひとりで何かしようと思わなくなったのです。だって、「ふたり」が何より楽しいから。
 おいしいものも、話題の映画も、素敵な風景も、ひとりでも楽しめるけれど「ふたり」で味わうと深みが増すからです。これも、ソロ活をしていたからこそ実感できる感覚なのかもしれません。
 だから、まずはソロ活。夢中になれるものを探しましょう! くれぐれも、ソロ活が楽しすぎて、人といるのがうっとうしい、とならないようお気をつけて。


第4回(2021.06.07)

復縁を望むなかれ

 40歳を過ぎると、だんだん男性からお声がかからなくなります。コロナ禍で、リアルの新しい出会いがない今、over40の状況は深刻でしょう。
 そんなとき、私たちが陥りがちなのが、過去の人脈。学生時代の友人、知人。仕事で出会った人たち。連絡帳とにらめっこし、名刺の束を一枚一枚精査して、可能性のありそうな人をピックアップしたこと、私もあります。もちろん、友人に紹介を頼んだことも、一度や二度ではありません。しかし、うまくいった試しはありませんでした。

 そうなると行きつくのが、そう、復縁です。元彼なら、性格やら好みやらもわかっているし、嫌いになって別れたわけではないのなら、一から始めるわけではないのでラクと言えばラクです。復縁は、いわば恋のリサイクル。SDGs的にもいいのかもしれません。

 私も30代の前半に、リサイクルを試みたことがあります。30歳のころ少しつきあっていた人と、彼の転勤がきっかけで別れました。その後別の人とつきあったもののそれもジ・エンド。ひとりになり、寂しい毎日を送っていたときに、転勤した彼が東京に戻ってきたことを風の便りで知るのです。
 私の胸はざわつきました。その彼とは物理的に距離ができて疎遠になったものの、大好きで大好きで、実はずっと忘れられなかったからです。
 まさにリサイクルのチャンス! さっそく、友人の人脈を頼って、彼の現状をリサーチしました。するとラッキーなことに、未婚、彼女なしだったのです。いよいよ私もハッピーになれちゃうの?? ウキウキしながら、リサイクル作戦を練っていました。

 そんなある日。六本木のクラブに遊びに行ったときのことです。ふたりの男性の会話が聞こえてきました。どうも初対面のふたりのようです。

男性1 「この前、川崎にいましたよね?」
男性2 「え? 川崎には行ってませんよ」
男性1 「うそだ~。絶対いた。あなたを見ましたよ」
男性2 「いやいや、違いますよ。人違いですよ」
男性1 「いや、絶対にあなたです。そっくりでしたもん」
男性2 「ええ……あれ? そうですか?」
男性1 「そう。あなた、川崎にいましたよ」
男性2 「そう……かな。あれ、川崎に行ったかな」
男性1 「行ったんですよ。僕、見ましたから」
男性2 「そうか。行ったのかな、川崎に」

 不思議な会話でした。男性1が「あなたを川崎で見た」と主張し続けた結果、川崎に行っていないであろう男性2は、自分は川崎にいたかもしれないと思い始めたのです。あまりに強く相手が主張すると、自分の記憶はいとも簡単に書き換えられてしまうものなのだと、彼らの会話に私は学びました。そもそも記憶なんてあいまいなものですからね。記憶操作なんて簡単にできてしまうものなのでしょう。

 これだ!

 私はひらめきました。これを、元彼リサイクルに使えばいいと。
 名付けて「川崎作戦」。久しぶりに連絡をする口実として、この作戦を使うことにしたわけです。

 後日、元彼に電話をかけました。ドキドキしながら電話をすると、彼は不在。留守電に明るく「ちょっと聞きたいことがあります」とメッセージを残しました。
 10分もしないうちに、折り返し電話がかかってきました。

 「久しぶり! 元気だった?」
 「元気だよ。どうしたの?」
 「先週の月曜、赤坂にいなかった?」
 「え? 赤坂には行ってないなあ」
 「うそだ~。絶対いたよ。カフェで打ち合わせしてたよ」
 「ええ? 赤坂のカフェ? 行ったかなあ……」
 「そうだって。そっくりだったもん」
 「そう? じゃあ、行ったのかなあ……。ところでさ、東京に戻ってきたんだよ」
 「ええっ! そうなのぉ??」

 そんな感じで会話が弾み、再会することになったのです。「川崎作戦」大成功です! 
私たちは何度かデートをしました。

 しかし、やっぱり、うまくいきませんでした。性格の不一致というヤツでしょうか、一緒にいてもなんだかくつろげないのです。会話もぎこちなく、以前感じたようなときめきも感じられませんでした。そして、自然消滅。以前別れた理由は転勤だけではなかった、ということが証明されたのです。

 女性は、気持ちを切り替えるのが早いもの。しかし意外にも、復縁を望む女性は多いと聞きます。中には、復縁して結婚に至る人もいます。でも、それは少数。ほとんどの場合、復縁してさらに傷ついて終わります、私のように。うまくいかなかった相手とは、たいていの場合、二度目もうまくいきません。ご縁がないのです。
 
 ご縁があれば必ず、また会えます。だから、無理に復縁しようとしないこと。復縁にエネルギーを使うくらいなら、新しい出会いを作る努力をしたほうが、よっぽど生産的です。年を重ねて受けるダメージは、深いです。無駄な傷など負う必要はなし! 持続可能なご縁を引き寄せましょう。


第5回(2021.06.21)

それでも不倫をやめられないあなたへ

 読者の皆さまの中には、道ならぬ恋をしている人もいることでしょう。かつて不倫は小説や映画の格好の題材で、秘めたる恋は文化の薫りさえ漂うものでした。
 しかし今や、不倫は文化などではありません。不倫をした芸能人は、まるで犯罪者のように白い目で見られ、ネット上で袋叩きに逢い、仕事も失います。一般社会でもそれは同じでしょう。私たちの価値観は大きく変わったのです。
 それでも不倫はなくなりません。コロナ禍で不倫活動も自粛せざるを得ないのか、目立たなくなりましたが、その数はそう減ってはいないでしょう。

 かつて、不倫をしていた女優が、「好きになった人にたまたま奥さんがいた」という主旨の発言をし、物議を醸したことがありました。不倫相手が運命の相手だったということもあるでしょう。現にその人はその恋を貫き結婚しましたし、同様の道を歩んだカップルも多数います。
 しかしそれは少数派。多くの不倫は、運命などではなく、それなりの理由があって生まれるものなのです。

 そもそも人が恋愛をするのは、種の保存のため。より強い子供を産み育てるため、自分にはない遺伝子をもつ人を選ぶと言われています。好きになる相手は本能が選んでいるということです。なんだか身もふたもない話ですが、人間も動物ですからしかたありません。
 いずれにせよ、人は何かを選ぶ際に、自分のプラスになるものを選びます。家庭がある人を選んでしまうのは、一見するとマイナスのチョイスです。苦しむだけで自分にはメリットはないように見えます。しかし実はそこに、れっきとした利点があるからこそ、不倫が成立しているのです。その心理を考えてみましょう。

 家庭があるのにほかの人を好きになる場合。ここでは妻子ある男性としましょう。家庭生活に不足しているものを補おうとして不倫に走ります。それは、温かな愛情かもしれません。スキンシップかもしれません。あるいは、自分を肯定し受け止めてくれる包容力かもしれません。何かしら足りないと感じているからこそ、それを持っている人を求めるわけです。
 キャバクラや高級クラブに男性が足を運ぶ心理を、多くの女性は理解できません。でも、ホステスやキャバ嬢は、客の話を一生懸命聴き、受け止めてくれます。その心地よさが家庭では得られないからこそ、彼らは足繫く店に通うわけです。不足を補えることこそが、彼らが浮気をするメリットなのです。

 一方、妻子ある男性を好きになる独身女性の心理はどうでしょう。
 不倫体質の人に多いのが、結婚を望みながら深層心理では結婚を恐れているケース。両親が離婚したとか、家庭不和だったなど、幼少期に家庭でつらい思いをしている人に多いのですが、幸せな家庭を知らないため、家庭を築くことに心の奥底で恐れを抱いています。また、自己肯定感が低く、自分は幸せになる権利はないのだと深層心理の部分で思い込んでしまっている人もいます。
 逆に、幸せすぎる家庭で育っているのに不倫をしてしまう女性もいます。父親が大好きで理想の人であるがゆえ、外での恋愛は彼女にとっては浮気。だから無意識に、幸せになれない相手を選んでしまうのです。
 このような心理があると、自分でも気づかないうちに破滅的な恋愛をするようになります。そのひとつが、不倫。不倫は幸せになれないとはなからわかっています。幸せにならなくてすむというメリットがある恋です。だからあえて、その道を選ぶわけです。  そのことに自分では気づいていないため、「私は男運がないの」と嘆く。そんな不幸を繰り返し、どんどんボロボロになっていきます。

 私自身も、そんなつらい時期を経験しました。次第に身も心もボロボロになり、人の幸せを喜べない卑屈な人間になりました。一生幸せになれないのだと絶望もしていました。
 でも、私はあきらめませんでした。そんな自分をまるごと肯定し、「幸せになっていいんだよ」と何度も何度も自分に言い聞かせたのです。時間はかかりましたが、心を浄化することができました。そして、本当の幸せを手に入れたのです。

 不倫は人を醜くします。中には真実の愛もあるでしょうが、まれです。不倫する男は、不足しているものを補うために、あなたを利用しているのです。自分の立場がわかっているのに本能を理性で抑えることができない未熟な人です。あなたにはふさわしくありません。
 もしも今、あなたが不倫をしているのなら、悪いことは言いません。そんな人は棄てておしまいなさい。
 そして、自分をまるごと受け入れましょう。認めたくないもの、見たくないことを認めることで、一歩踏み出せます。そして、幸せになる許可を自分に与えてください。自分という存在を大切にし、かわいがり、愛してあげてください。あなたがあなたを愛さなければ、だれもあなたを愛してくれません。
 まずは優しい言葉をたくさん、自分にかけてあげることです。食べたいものを食べたり、心がうきうきするようなものを買って、自分を楽しませるのもいいですね。
 今は苦しくても、その先に穏やかな日々が待っていることを信じましょう。


第6回(2021.07.05)

受け取り力を強化せよ!

 先日、カウンセリングに来られたAさんとこのような会話をしました。
Aさん 「私、自分で言うのもなんですけど、よく気がついちゃうんです。ここはもっとこうしたほうがいいとか、誰かがミスしているとか。そんなときはパパッと片付けちゃう。人のミスもこっそり直したりします。だからですかね、よく頼まれるんです、雑用みたいなこと。自分の仕事だけでも忙しいのに、頼まれちゃって、結局残業続き。なんか、疲れちゃいました」
 「Aさんはとっても気の利く方なんですね。気づくからこそやらずにはいられない。そんなAさんだからみんなから信頼されていて、いろいろお願いされてしまう。信頼を裏切りたくなくて、Aさんもついつい頼まれごとを引き受けるんですね。でもキャパオーバーで疲れている」
Aさん 「そうなんです。なんで私ばっかりって思ってしまいます」
 「Aさんは人に何かを頼むことはないんですか?」
Aさん 「ないです。だって申し訳ないでしょう? 負担をかけてしまいますから」
 「誰か、手伝おうかって言ってくれる人はいないんですか?」
Aさん 「います。でも、気を遣わせて申し訳ないから『大丈夫だよ』って言って、自分でやっちゃってます」

 Aさんは独身。会社だけでなく、家でも年老いた両親の代わりに家事をこなしていると言います。ひとりで頑張っているのですから、疲れて当然です。
 実はAさんのような人は少なくありません。あなたはいかがですか? Aさんのようにひとりで頑張りすぎていませんか?

 翻って、私の30年来の友人T子の話を。
 T子はステディの彼がいながらちょこちょこイケメン(じゃない人もいましたが)のつまみ食いをしてきた女性。とにかくモテるのです。容姿は中の中ぐらい。話し方も振る舞いも男っぽく、一般的なモテ女のイメージとはかけ離れています。なのに、モテるのです。私もそのことをずっと不思議に思ってきましたが、心理学を学ぶようになってその謎が解明されました。

 T子は、受け取り上手なのです。

 原始人時代、男は狩りに行き獲物をしとめて、家で待っている女にそれを与えていました。そして女はそれをありがたく受け取り、家族で平和に暮らしていたわけです。そこからもわかるように、男性は与えたい性、なのです。女性だって誰かに親切にしたい、役に立ちたいという欲求は持っていますが、本能的に男性のそれは女性の比ではないのです。彼らは、誰かのために役に立ちたい生き物であり、それを叶えてくれる女性を愛するということです。

 T子はそんなことはまったく知りませんでしたが、男性が与えてくれるほめ言葉や親切や美味しいものや美しいものを、ありがたく受け取っていたのです。それも、大げさではないかと思うほどの感謝の言葉と満面の笑みを添えて。

 キレイだし性格もいいのになぜかモテない女性には、冒頭のAさんのようなタイプの人が少なくありません。受け取り下手な人です。恐らくは、「人様に迷惑をかけてはいけないよ」と親から言われて育ったのでしょう。何かをしてもらう=迷惑をかけると勘違いしてしまっているがゆえに、人の親切を素直に受け取れないのです。
 男性が「おごるよ」と言ってくれているのに、頑ななまでに「半分支払います」と財布からお札を取り出して相手をしらけさせてしまった経験、あなたにはありませんか? 雨の日に「傘を貸すよ」と言われて「大丈夫です。少しくらい濡れてもいいんです」と断った経験はありませんか? だとしたら、あなたも受け取り下手です。

 心当たりがあるなら、すぐに受け取り力向上トレーニングを始めましょう!
 まずは、コンビニやスーパーのレジで店員さんに「ありがとう」と言いましょう。店員さんはあなたが買ったものをレジに通すという行為をしてくれたのです。仕事であってもあなたに貢献してくれたということ。その貢献を受け取るのです。
 それができるようになったら、次はお願いチャレンジ! 高いところにあるものを「取ってください」と頼む。仕事を手伝ってほしいと頼む。わからないところを教えてほしいと頼む……。自分でできることを敢えて頼むのです。できれば相手は男性がいいですね。話しかけやすい同僚などから始めるとやりやすいでしょうが、もしも意中の人がいるなら思いきって頼んでみましょう。
 そして、無事にお願いを聞き入れてくれたら、思いっきり感謝します。「あなたのおかげで命拾いしました」ぐらいのスケールで、満面の笑みとともに大きく感謝を伝えましょう。ここ、大事なところですからくれぐれも忘れないように! 感謝を忘れたらただの図々しい女で終わってしまいますから、ご注意くださいね。

 このトレーニングを続けると、あなたもいつしかT子のようになっているはず。あ、でも、男性は勘違いしやすい生き物でもあるので、「この人にはモテたくない」という御仁にお願いチャレンジをするのは避けたほうがいいかもしれません。


第7回(2021.09.06)

四十路女よ、レジリエンスを高めよ!

 TOKYO2020パラリンピックを見ながらこの原稿を書いています。障害をものともせず自らの限界に挑む姿を見て、勇気をもらった人も多いことでしょう。私も、自分がいかに甘ったれた日々を送っているかに改めて気づかされ、猛省しています。

 パラリンピアンたちは、レジリエンスを体現していると言われます。レジリエンスとは、回復力、逆境力などと訳されますが、ちょっとやそっとのことでは折れない強い心、折れかかったとしてもそれを糧にできるしなやかな心のことを指します。
 障害があっても、その現実に負けることなく、まさに逆境を乗り越えて活躍する彼らのレジリエンスたるや、とてつもなく強靭です。爪の垢を煎じて飲ませていただきたいものです。

 40歳を超えて結婚できていないことは、決して恥ずることではありません。しかし、今に至る道のりで、あなたもさまざまな傷を負ってきたことでしょう。その傷は、じわじわとあなたの前向きな気持ちを奪っているかもしれません。崖っぷちに立たされ、あきらめの境地に片足を突っ込んでいる人もいるかもしれませんね。心の聖火も消えかけているでしょうか。
 しかし、あきらめてはいけないという精神をパラリンピアンから学んだ今こそ、声高らかに叫びたいと思います。

 四十路女たちよ、レジリエンスを高めよ!

 レジリエンスを高めるのにはいくつか方法がありますが、中でも「私はできる!」という自己効力感が重要と言われています。自己効力感は、4つの要素を強化することによって高まるとされています。
 ひとつめは、直接的体験。自分自身の成功体験、失敗体験から学ぶということです。あなたもこれまで、さまざまな恋愛を体験してきたことでしょう。うまくいったことはどんなことですか。失敗から学んだことはなんでしょうか。失敗を重ねると人は臆病になるものですが、かのエジソンはこう言っています。
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」
 あなたの過去の失恋体験は失敗ではありません。うまくいかなかった方法です。ならば違う方法を試せばいい。それだけのことです。

 ふたつめは、代理的体験。人の成功体験を見て真似せよ、ということです。40歳を過ぎて結婚をつかんだ友人はいますか? あるいは、若くして結婚して幸せな家庭を築いている友人はどんな方法で結婚をつかんだのでしょう? 「あの人は運がいいんだ」とか、「勝ち組のあの人は私とは違うんだ」などと、その人と比較して自分を卑下していませんか? また、うまくいっている人を見て嫉妬し、その人との交流を絶つようなことをしていないでしょうか。だとしたら、喝! です。あなたは、失敗する方法を取ってきてしまっただけですから、その人たちにせっせせっせとどうしてうまくいったのかをインタビューして真似るのです。何事も、うまくいっている人に学ぶのがいちばんです。

 3つめは、言語的説得。人に励ましてもらう、あるいは自分で自分を言葉で説得するということ。こんなに愛される理由があるのだから大丈夫、と自分を励ます言葉を人にもらったり自分にかけてあげたりするのです。
 車いすテニスの国枝慎吾選手は、ラケットに「俺は最強だ」と書き、自らを鼓舞しています。人に言ってもらう機会がなくても、自分で自分に言葉をかけることならいつでもできます。さあ、国枝選手のように、自分を励ましましょう。

 そして4つめは、情緒的喚起。何らかの力を借りて気分を高めましょうということ。
 私の母は、私が大学入学と同時にひとり暮らしを始める際、なぜか新婚家庭のような家財道具を揃えてくれました。夫婦茶碗に夫婦箸、布団は二組、ティーカップは来客を考えて5客……。いつ結婚してもいいように、ということだったのかもしれませんが、確かに、私の部屋にはしょっちゅう人が集まってきていました。人を受け入れる準備が整っていたからでしょう。
 準備が整ったときに、チャンスはやってくると言います。いつでも結婚生活に入れる準備をしておくのは、結構大事なことなのでしょう。

 人間には無限の可能性があります。あなたも例外ではありません。さあ、今日から自己効力感を強化して、レジリエンスを高めましょう。決してあきらめず、あらゆる方法を試して、結婚という金メダルを獲得しましょう!


第8回(2021.10.22)

五感を駆使して結婚を引き寄せる!

 コロナ禍でリアルな婚活が難しくなった今、アプリを使って出会いを広げている人も多いようですが、あなたはどうしていますか?
 出会いを増やすのは大事なことではありますが、その出会いが結婚に結びつくかどうかは神のみぞ知るわけで。やみくもに婚活に精力を注ぎ何の成果も得られなかった人が、婚活うつになる事態に陥ることもあります。婚活アプリで詐欺被害に遭うケースもあります。どうぞお気をつけて。
 
 極端な話、引きこもっていても、山の中でひとりで暮らしていても、結婚する人はするのです。では、必死に婚活しているのに結婚できないあなたに何が足りないのか?

 それは、「引き寄せ力」です。

 引き寄せの法則という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう? 欲しいものをイメージし続けて手に入れるというスピリチュアルな法則です。いわば、願えば叶う、ということ。スピリチュアルという言葉を毛嫌いする人も、初詣に行った経験はあるはず。神様にお祈りするのも、引き寄せも、似たようなものです(正確には違うのかもしれませんが、私の中では通ずるものがありますね)。ときには、見えないチカラを信じてみるのも悪くはないですよね。
 あなたはこれまでに何か引き寄せた経験がありますか? あるならば、結婚も引き寄せてしまいましょう。引き寄せってなに? 引き寄せてみたけれど何も寄ってこない、という人は、その具体的な方法を伝授いたしますのでトライしてみてください。

 引き寄せのやり方は、カンタンに言えば、なりたい姿をありありとイメージするということ。実はカウンセリングにもビジュアルを使う手法があります。今の問題は置いておいて、問題が解決した暁にはどんな自分になっているか?をイメージするという心理療法です。五感でありありと感じたイメージは現実化すると言われています。脳は、現在と未来を区別できず、強烈にイメージしたものを再現しようと勝手に行動のプログラムを組んでくれるのです。引き寄せの法則もまさにそのような仕組みなのだと思っています。
 実際、私も、過去にこの療法を活用していろんな未来をイメージしてきましたが、ありありと感じられた未来はほとんどが実現しています。もちろん、結婚も。

 では、やり方を解説しましょう。

 リラックスできる場所でゆったりとした姿勢になります。目を閉じ、未来をイメージしていきましょう。1年後、3年後、5年後。いつをイメージするかをまず考え、その未来にタイムスリップしたと思ってください。そこには、未来の、既婚のあなたがいます。季節はいつですか? 時間は何時? どこにいるのでしょう? どんな服装をして、何をしていますか? まわりに誰かいますか? 何か匂いはしますか? 肌に触れるものはありますか? どんな気分でしょう?

 幸せそうな未来の自分をイメージできましたか? ここでとても大切なのが、「気分」です。引き寄せの法則でも、「気分」がよりよい未来を連れてくると言われています。欲しいものが手に入った、なりたい自分になれたときの「気分」を先取りして感じるのです。そして、その「気分」を感じ続けることによって、引き寄せが叶うということです。
 
 カウンセリングでもこの療法を使うことがよくありますが、自分の未来にポジティブなイメージを抱けない人が少なくありません。エネルギーがダウンしているときは難しいものですが、長年のクセも大きいようです。
 人生は思い通りにはいかない、と言う人がいますが、私はその言葉を否定します。

人生は、自分の思った通りになる、のです。

 自分の未来にはいいことなんか起こらないと思っていたら、その通りになります。けれど、ちょっといいことが起こるはず、と思っていたら、やはりそれは現実化するのです。要は自分次第、ということです。
 だから、誰に遠慮することはありません。思う存分、楽しくて幸せな未来を思い描いて、その「気分」を味わい続けてください。きっと未来が勝手にあなたの「気分」に近づいてきます。

 ただし、願うだけ、祈るだけ、イメージするだけではダメ。その未来にふさわしい自分になる努力をすることも忘れずに。神様も、見えないチカラも、努力しない人には手を差し伸べてくれませんよ。


第9回(2021.11.05)

親を許そう

 最近、「親ガチャ」なることばがネット上を飛び交っているそうです。親というのはガチャガチャのようなもので、たまたま「いい親」だったらアタリだけど、「毒親」だったらハズレ。どんな親の元に生まれるかは運次第、ということを言い表したことばのようですが、いやはや、なんとも切ない表現です。

「毒親」という概念は少し前から存在していました。「アダルトチルドレン」という言葉もずいぶん前から使われていましたね。
「毒親」=子供をまっとうに育てる能力がなかったり、子供を傷つける言動をする親に育てられることで、子供が傷つき、「アダルトチルドレン」=なんらかの生きづらさを抱えた人になる、ということは、さまざまなところで研究がなされている問題でもあります。心理学にも「機能不全家族」なる用語がありますし、人が何か問題を起こすと、世間はその生育歴を探ろうとします。

 親子関係は最初の人間関係ですから、それがその後の人間関係のベースになります。当然ながら結婚にも及びます。かくいう私もそのことに苦しみ続けたひとりです。
 私はごく普通の家庭に生まれ、何不自由なく育ちました。しかしひとつだけ、幼少時から心を痛めていることがありました。母から父の悪口を聞かされ続けていたのです。
 小さな子供は母親の味方ですから、母を苦しめる存在を憎みます。私は父親のことが大嫌いになりました。なおかつ、結婚は地獄だ、と物心つく頃には思うようになっていました。
 それはその後の恋愛にも大きな影を落とします。男性とおつきあいをしても、心を開けない。普段通りの自分でいられない。あるいは、恋人や奥さんのいる人を選んでしまう……。さんざん傷つきました。

 なんて男運が悪いんだ。そう、自分の運命を呪ったものです。でもある日、親との関係が恋愛に多大な影響を及ぼすことを知り、衝撃を受けました。そして、関連書籍を読みまくったのです。
 結果、家庭での経験から、私の心の中には、父を含め男性というものは女性の敵である。地獄である結婚は遠ざけるべし、というプログラムが出来上がってしまっていたことがわかったのです。恋愛がうまくいくはずがありません。
 なんとかしてこのプログラムを書き換えなければ。私は、御年80歳・大ベテランの女性カウンセラーのカウンセリングを受けることにしました。

 そのときに受けたカウンセリングは、「エンプティチェア」というもの。椅子をふたつ用意し、片方に自分が座ります。もうひとつの椅子には母が座っているとイメージし、イメージの中で対話を重ねていくのです。
 カウンセラーの誘導のもと、私は、言いたくても言えなかった苦しい思いを、イメージの中の母に告げます。
「お母さんからお父さんの悪口を聞かされるのが、すごく嫌だったよ」
「そう……。ごめんね。私もね、ほかに言える人がいなくて、あなたに甘えてしまった」
「私はお父さんが嫌いになっちゃったんだよ。それで、今も苦しんでる」
「ごめんなさい。ごめんなさい……」

 目の前にいる母は、小さな子供のようにうなだれていました。江戸っ子で都会のデパート勤め。歌舞伎観賞が好きだったおしゃれな母は、やがてお見合いで田舎の生まれの父と結婚します。父の地元で暮らすようになり、働くことを父から許されず仕方なく専業主婦になりました。ちょっと口答えすれば、昭和ひとケタ生まれの父に大声で怒鳴られる。それでも働いていないから我慢するしかなかった。
 母もまた、苦しかったのです。だから、小さな娘を味方につけるしかなかったのでしょう。

 カウンセリングを終え、私は母を許すことができるようになりました。長年背負っていたものを降ろせたような、何とも言えない気分になりました。
 その後、徐々に素直に人に心を開けるようになり、やがて結婚に至ったのです。

 私もまた、「毒親」の娘だったのかもしれません。でも、「毒」をもたない親などどこにもいません。だから、「親ガチャ」でアタッたかハズレたかだとか、自分の親が「毒親」かどうかなどどうでもいいこと。大事なのは、自分を世界で誰よりも愛してくれているはずの親を、受け入れて、許すことです。

 親の傷を理解し、認めること。無理に好きにならなくてもいいから、してくれたことに感謝すること。

 あなたがもし、親のことで傷つき、結婚にたどり着けないのだとしたら、イメージの中でその作業をしてみてください。
 私は親を許すことができましたが、感謝を伝えることができないまま、親は他界してしまいました。そのことが、今も心残りです。あなたの親が健在なら、ぜひ会いに行って感謝を伝えてくださいね。


第10回(2021.12.14)

結婚する日を決める

 このコラムには「締め切り」はありません。人間は元来、なまけものです。「締め切り」がないと、ダラダラしてしまい、いつまで経っても終わらない。いや、始めようとしないものです。だから、更新が不定期になってしまうのですね・・・すみません。

 さて。私は働く人のカウンセリングをしていますが、仕事がなかなか終わらないとか残業時間が多い人には共通項があると感じています。それは、「締め切り」を意識していないということ。
 かつて、残業ゼロを実現した企業の社長が、「締め切りがあるからこそ、仕事は終わるものだ」と言っていましたが、まさにその通りだと思います。ゴールがないと人は動かない、走れない、走り方がわからなくなります。
 たとえば、デートの予定がある日は、死にもの狂いで仕事を片付けるものですよね。絶対に終わらせなければならないというゴールが、人を突き動かすのです。
 有名な経営者も言っていました。「夢に日付を」と。やりたいことがあるなら、いつまでに達成するのかを決めなければいけないという主張です。
 そう。次々に夢をかなえている人は、「締め切り」を設定しているものなのです。

 あなたはどうでしょう? 今日は何時に仕事を終えるか意識していますか? やりたいことをいつまでに達成するのか、日付を手帳に書き込んでいるでしょうか。答えが「NO」なら、あなたが結婚できない理由はそこにあるかもしれません。

 前回、強い願望こそが現実を引き寄せるのだという話をしました。でも、ただ漠然とその願望を思い描いているだけではいけません。いつまでに成し遂げるのかを明確にするのです。
 私の場合は、結婚の日付を設定するのが遅かった。願望は抱いていたものの、日付を設定しないまま40代を過ごしてしまいました。48歳になったころ、ひとりで晩年を過ごす寂しい自分の姿が頭にちらつくようになり、さすがにまずいと焦りました。そしてようやく、「50歳の誕生日の1日前までに結婚する」という「締め切り」を設定しました。

「締め切り」にはとてつもない力があります。「○○までに終わらせなければいけない」と考えると、自然と効率の良い段取りを考えるようになります。段取り上手になり、やるべきこと・やらなくていいことの取捨選択ができるようになり、ちゃんと結果が出せるようになるのです。
 これは仕事だけの話ではありません。結婚も同じ。いつまでに結婚するという明確な目標があるからこそ、やるべきことに集中し、ムダな努力を排除できるようになります。

 あなたが結婚する日=「締め切り」を設定したら、今度は行動を決めていきましょう。たとえば、2年後の今日までに結婚するとしたら、1年後はどんな自分になっている必要があるのか。半年後はどうか。そのためには今、何を、どれだけしたらいいのか。未来から逆算して、今するべきことを考えます。
 1年後に結婚相手の候補が3人いる状態になっているとしたら、半年後には10人と出会っている必要があるかもしれません。ならば婚活したり、再度周囲にいる独身を見直してみたり、人に紹介を頼むなど、今日からできることはいくらでもあるはずです。

 動かなければ、出会えません。着実に動くためには、「締め切り」が必要なのです。さあ、今すぐ、あなたが結婚する日を決めましょう。そのときから、あなたの結婚時計が動き出します。

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 桜野かほり(さくらの・かほり)
1966年生まれ。心理カウンセラー。ビジネスシーンを中心にこれまで8万5千人のメンタルケアを行ってきた。ペットのうさぎに癒されながら、難関資格取得を目指す夫のサポートをゆるゆる実践中。「あげまん道」を究めるのが次なる目標。