書 籍

方丈社書籍

やりがいある介護・後悔しない介護

飯野三紀子 著
四六判並製 208頁
定価:1,600円+税
ISBN:978-4-910818-06-1

 

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介護なんて自分には関係ない。そう思っている人も多いと思います。
しかし高齢者の介護は「ある日」「突然」に「予告なく」やってきます。
家の中のわずかな段差につまづき、転倒して大腿骨を骨折。歩行困難で寝たきりになるという例は、決して珍しいことではありません。 昨日まで自分のことは自分でできていた高齢者が、ある日突然に予告もなく要介護者になってしまうのです。

親の介護をしている人を傍から見て、「大変そう」「気の毒」「可哀そう」と同情的に見てはいませんか。そう見てしまうのは、介護は 「背負った負担」で、できることなら「避けて通りたいこと」というイメージが強いからです。しかし、これからは介護を避けて通ること のほうが難しい時代に突入します。「介護は他人事」ではなく「自分事」としてとらえなければならない「一億総介護時代」となり、 介護とともに生きざるを得ない時代が到来したのです。

そこで、これからは介護を「誰もが経験すること」「人生の一つのステージ」と冷静にとらえるべきではないでしょうか。そして介護を 「正対して取り組む人生の課題」として受け止める。そうすることで、介護は人間力アップと人生を充実させるチャンスととらえることが できます。

介護の理想はオーダーメイドですが、現実的には「前向きな妥協」が必要です。大事なのは介護をする人、される人に合った介護を 作りあげられるかどうか。そこで著者は介護版の「人生会議」をすすめています。まだ親が介護を必要としない元気なときに、 介護についての希望をしっかり話し合って決めておく。そうすれば突然に介護が必要な事態が起きても、慌てることなくケア マネージャーに親の希望を伝えることができます。

本書では介護する側もされる側も納得できる介護、後悔を残さない介護の在り方を考え、「やらされる介護」から「自分づくりの 介護」という視点で、どうすれば介護を自分らしく生きていくための成長のチャンスにしていけるのかを考えていきます。

 

 

■ 目次

まえがき

第1章 介護は「他人事」ではなく「自分事」
——介護をジョブ・クラフティングする

予告ななく突然に始まる介護——相談者Yさんの場合①
自宅に戻れぬまま亡くなった父親——Yさんの場合②
双方納得の選択が何より重要
介護のための「人生会議」
「介護=高齢の親の介護」とは限らない
「介護は経験しないとわからない」と心得ておく
介護は「他人事」ではなく「自分事」
介護を「人生の一つのステージ」ととらえる時代
「ジョブ・クラフティング」という視点
介護もキャリアの一つ
「やらされ感満載」を「やりがいのあること」に
介護は人間力アップと人生充実のチャンスになる

第2章 介護との「正しい距離感」を考える
——できることを奪わない、見守ることも立派な介護

時代に合わせて変わり続ける介護保険制度
介護に対する心構えをしっかり持つことが重要
納得できるところまで関われば後悔はない
「ちょっと待って、よくよく考えれば」という癖をつける
介護費用は「ざっくり把握」、使える資金は「しっかり把握」
高額出費を招いたナースコールの教訓——契約書チェックは必須
理想は「オーダーメイド」、現実は「前向きな妥協」
最期を迎えるまでの生き方
在宅介護の限界
入居型高齢者施設の誤解を解く
介護は家族の生活もガラリと変える
持つべきものは「介護友だち」
「介とも」と気持ちを分かち合う
「介護がつらい……」とならないために
地域包括支援センターをフル活用する
なぜデイサービスに行きたくないのか
ヘルパーさんを受け入れてもらうときのポイント
会話が衰えをスピードダウンさせる
家族間の「情報更新」をしておく
ヘルパーさんとの会話が弾む小道具を用意する
スパルタ的介護のすすめ
結局、介護は耐える力

第3章 介護版「人生会議(ACP)」のすすめ
——納得のいく介護と人生完成のために

「介護なんて先のこと」と棚上げしない
いつか始まる介護生活の前に「人生会議」を
エンディングノートの落とし穴
介護版「人生会議」のやり方
まず「本人が大切にしていること」を聞き出す
要介護者が信頼できる人を決める
介護の希望を細かく具体的に記録しておく
「人生会議」で本音を聞き出すには
「もしバナゲーム」をやってみよう
「人生会議」のポイントは「リアルに考える」こと
リアルに考えると「決めておくこと」がはっきりする
「死んでしまう場合」から遡ってみる
よく生きることは、よく死ぬこと
理想は「家族全員での人生会議」
真剣な「人生会議」は家族観にまで行き着く
主役抜きの「人生会議」でもメリットはある
「人生会議」の見直しを恒例行事に
医療技術の進歩、法律改正時も見直しのタイミング
お墓は誰が守るかも決めておく
自分が死んだ後のことまで考えておく
「言いっぱなし」はNG
自分のための「人生会議」
「死」を感じるから「生」を意識できる

第4章 介護は自分を成長させるチャンス
——介護で身に付く一〇の能力

「仕方なく」の中に「やりがい」を見つける
介護で身に付く能力①——時間管理能力
介護で身に付く能力②——忍耐力
介護で身に付く能力③——観察力と想像力
介護で身に付く能力④——判断力と対応力
介護で身に付く能力⑤——コミュニケーション力
介護で身に付く能力⑥——傾聴力
介護で身に付く能力⑦——情報収集力
介護で身に付く能力⑧——継続力
介護で身に付く能力⑨——ストレスマネジメント力
介護で身に付く能力⑩——アンガーマネジメント力
介護は「心の筋トレ」

第5章 介護は要介護者と介護者との共同プロデュース
——介護の犠牲者にならず、人生一〇〇年時代を生き抜くために

「人生会議」の主役は医療従事者ではない
リサーチのために介護休暇を使う
介護は要介護者と介護者との共同プロデュース
「介護は子どもの務め」という先入観を捨てる
「おひとりさま」になったらどうするか
カウンセリングを利用してでも自分のタイプを知っておく
疲れたら休む
人と比べない、反省しない、完璧を求めない
介護とネガティブ・ケイパビリティ

あとがきにかえて 母の歌声が教えてくれたこと

 

■著者 飯野三紀子(いいの・みきこ)
(社)介護離職防止対策促進機構理事、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、健康管理士。
企業の人事部経験を経て、人材紹介会社でキャリアコンサルタントとして従事。2000年に母と2人で叔母の介護と看取りを経験。その後、母親が認知症発症、同時期に親友のうつ病介護が重なり会社員生活を断念。自身のキャリアを見直しフリーランスとして独立。心の問題を扱うべく大学で心理学を学び直し、要介護4の母を在宅介護しながら、働く人の「心の健康」と「介護と仕事両立」のための支援を行っている。5人の介護と4人の看取りを経験。ココロとカラダのケアラボを主宰している。