書 籍

方丈社書籍

少女まんがは吸血鬼でできている

中野純・大井夏代 著
A5判 376頁オールカラー
定価:2,800円+税
ISBN:978-4-908925-38-2

 

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少女まんがは吸血鬼でできている
古典バンパイア・コミックガイド

エドガーは、なぜここにいるのか。
怪しく光芒を放つ50〜70年代の吸血鬼(バンパネラ)の
名作・奇作153点を読みとく。

少女まんがの黄金時代を築いたのは、吸血鬼たちだった! このテーマのもと、『ポーの一族』(萩尾望都)や『夢の碑』(木原敏江)などの吸血マンガを総ざらいする前代未聞の少女まんがガイドブック。
手塚治虫『リボンの騎士』、池田理代子『ベルサイユのばら』、いがらしゆみこ『キャンディキャンディ』などの「健全」な名作が、少女まんがの代表として語られてきた。だが実は、男性社会にあまり認知されてこなかった萩尾望都『ポーの一族』、木原敏江『夢の碑』のような、ある意味「不健全」な名作こそが、少女まんがのほんとうの主流だ。
新時代の女性まんが家第1号、里中満智子のデビュー作『ピアの肖像』(1964年)は、可憐な吸血鬼少女の悲しい物語。少女まんがの黄金時代の幕開けを飾ったといえるこのエポックメーキングな作品が、実は吸血コミックだったことはあまり記憶されていない。彼女は『薔薇にくちづけ』(1974年)という吸血コミックも描いている。
少女まんが史上最高傑作といえる萩尾望都『ポーの一族』(1972-1976年、2016年)は、14歳の美少年吸血鬼の愛と孤独の物語。この作品は実は、石森章太郎の少女まんが『きりとばらとほしと』(1962年)に着想を得た。
80年代を代表する少女まんがのひとつ、池野恋『ときめきトゥナイト』(1982-1994年)は、吸血鬼の家系のラブコメディ。
そして、ジャパニーズ・ファンタジーまんがの巨匠、木原敏江の大作『夢の碑』(1984-1997年)は、和風吸血鬼を軸とした物語。彼女はまた『いとしのアンジェル』(1970年)や『緋色のロマンス』(1971年)、『銀河荘なの!』(1974年)、『花伝ツァ』(1980年)等の吸血コミックをデビューの翌年から描いている。吸血コミックの巨匠と言ってもいい。
山田ミネコ『最終戦争シリーズ』(宇宙吸血鬼といえる存在が登場する未完の超大作)や、青池保子『吸血鬼』『ドラキュラ館は大騒動』、ささやななえ『深いむらさき色の』、山本優子『彼女は吸血鬼』、新谷かおる『吸血鬼はおいや』、杉本啓子『暗やみの紅いバラ』、河あきら『ニンニク賛歌』、水速零『とげのないバラ』、飛鳥幸子『美しき吸血鬼』、早合操『トランシルバニア・レクイエム』、しやま礼『ドラキュラくん』、神奈幸子『青い夜の誕生日』、伊丹理央『クレージーハウスの同居人』『ミス・ドラキュラ参上』、山口明日香『吸血鬼のアダムへ』、城章子『血を吸うバラ』、松本洋子『きみの血を…』、倉多江美『メニュー』、青木庸『ドラキュラ伯爵夏の休日』『ドラキュラ伯爵春の訪問者』『ドラキュラ伯爵ものおもいの季節』など、吸血少女まんがは枚挙に暇がない。
本書はこれら吸血コミックをあまねく紹介するガイドブック。広くかつ深く、吸血コミックと吸血鬼の魅力を語る。少女まんが館の蔵書をフル活用して、吸血コミック画像をふんだんに掲載する。

 

「まえがき」より

この本はまず第一に少女まんがファンに向けた本だが、ぜひとも、ファンでない人にも読んでほしい。そして、少女まんがの素晴らしさを知ってほしい。
私たち夫婦は「少女まんが世界の永久保存」を目指して、少女まんが専門の私設図書館「少女まんが館」を運営している。長くやってこれた原動力のひとつは、『ポーの一族』と『花伝ツァ』の衝撃だ。その原動力の強さはまったく衰えていないということを、この本をつくってみて確信した。これからももちろん、少女まんが館を続けていく。
少女まんが館をやっていて「ニッチなところを狙ってきましたね」と男性に言われたりするが、とんでもない! ニッチなんかじゃない。これが日本文化のど真ん中だ。
少女まんがの核心部、吸血鬼少女まんがの世界へ、ようこそ! 

 

目次

・吸血鬼少女まんが概論Ⅰ
少女まんがの黄金時代を築いたのは吸血鬼たちだった!
吸血鬼とともに始まった少女まんがの新時代/プラトニック・エロ/自由な血縁/LGBT全面肯定/ドラキュラからエドガー、不老不死から不成不死/精霊型吸血鬼の孤独、永遠の刹那/ホラーとの訣別、吸血鬼ハンターは味方に/死にながらえている/少女まんがが吸血鬼を救う/少年まんがは吸血鬼と戦う/戦う前に愛し、進化する前に深化せよ

・吸血鬼少女まんが概論Ⅱ
最近の吸血鬼少女まんが事情
二〇一六年初夏、『ポーの一族』四十年ぶりの新作/『プレミアチーズ!』に衝撃/『マーガレット』『ショウコミ』『花とゆめ』三誌に吸血鬼少女まんがの連載が!!/『ヴァンパイア騎士』と『吸血鬼と愉快な仲間たち』 少女・女性まんが雑誌の裾野を見渡す/吸血鬼少女まんがは花盛り

・『ポーの一族』シリーズ   萩尾望都
十八世紀イギリスの美しきバンパネラの世界

1ページ劇場   世に初めて、エドガーとメリーベルが登場
 すきとおった銀の髪/ポーの村/グレン・スミスの日記/ポーの一族

コラム エドガー・アラン・ポーの世界
 メリーベルと銀のばら/小鳥の巣/ジョニーウォーカーくんのバラものがたり

1ページ劇場   一九七五年以降のポーシリーズ予告ポエム
 エヴァンスの遺書/ペニー・レイン/リデル・森の中/ランプトンは語る/ピカデリー7時/
はるかな国の花や小鳥/ホームズの帽子/一週間/エディス

一九七六年「ポーの一族」カレンダーより
 春の夢

コラム 四十一年後の奇跡
 ユニコーン

コラム 円らな吊り目


・『夢の碑』のあとさき   木原敏江
吸血鬼少女まんがの永遠のトップランナー

いとしのアンジェル/緋色のロマンス/銀河荘なの!/大江山花伝

コラム びきんぐあの末裔、夢の日本鬼史
 花伝ツァ/鬼の泉

コラム 忘れ草を忘れた日本人
 風恋記/月光城

コラム 鬼と南朝の『夢の碑』
 それは常世のレクイエム/白妖の娘

コラム 現実のイバラキの地を歩く―木原敏江「大江山花伝」「鬼の泉」の源流へ
 日本の吸血鬼伝説のメッカ/大江山超絶孤独実地妄想旅/一条戻橋の下にいた白い人/羅城門の俺/薔薇切り少年の故郷へ


・最終戦争シリーズ   山田ミネコ
未完のSFファンタジーの広がり

メランコリーブルー/ベルテーンの魔女/緑の丘の白い家/土曜の夜/ダグラス君シリーズ 1.ハイ・ホルボーン 2.ソールズベリ 3.グリーン・ヒル

コラム 七〇年代最終戦争シリーズのこと

コラム デーヴァダッタとは?

最終戦争伝説

コラム 給血鬼


・一九五〇~一九六〇年代
少女まんが吸血鬼革命の夜明け

紅こうもり(横山光輝)/ひとりぼっちのすずらん(野呂新平)/きりとばらとほしと(石森章太郎)

コラム バラは敵か味方か
 ピアの肖像(里中満智子)/ばらが泣くとき(原作・立原えりか まんが・青池保子)/吸血鬼(青池保子)


男性まんが家たちの恐怖ミステリー
 黒髪さま(木山茂)/白い血(浜慎二)/わたしを見ないで!/くもの館(池川伸治)/ 白衣のドラキュラ/血 血がほしい/ヒルが吸いつく!(古賀新一)/うろこの顔(楳図かずお)/血をすう腕(原作・中岡俊哉 まんが・菅原わたる)

「鬼と血」のよみものページ
 日本の鬼 西洋の悪魔/もう血を売るほかはない!―大阪の房子ちゃんのお話―/ミニコラム 『少女クラブ』昭和三〇年二月号のもくじから

絵物語とこわい特集の吸血鬼たち
 吸血鬼がほんとうにいた!?/吸血鬼の館/吸血鬼は生きている?/鬼ばばの家/吸血鬼にねらわれた少女/血をすって生きかえった騎士/少女をねらう血ぞめのハンカチ/切手からぬけでた黒いちょう/少女をおそった見えない怪物/血をすう青いばら/さまよう吸血鬼/わたしは狼少女/異人館の白いねこ/吸血鬼ドラキュラ/怪異おさかべ姫/人狼/五回死んだマリー!/親友マルグリータ/のろわれた花嫁/赤いバラのおきて/吸血鬼/血を吸うこうもり老婆/なぞの「はがた」/吸血ぐも/ああ血がすいたい/みえない吸血鬼/生きかえった怪人/おはかにすむ吸血鬼/吸血鬼をふせぐおまじない/血をすわれる少女/吸血鬼の家/わたしは吸血鬼・・・・!?/ ああ血がよんでいる! のろわれた吸血少女ペナシア

ミニコラム
 血液銀行とは社会的吸血施設!?/吸血鬼のような鬼ばばは貰い子殺人犯/青いバラの妖しさ/恐くて醜い吸血鬼/血を吸う日本の妖怪ぬけ首/世にもふしぎな妖魔の国/『少女コミック』創刊号とよみものページ/『少女コミック』一九六八年八月号「吸血鬼は生きている」/七〇年代前半少女まんがの革命期/吸血鬼の伝道師 武田武彦/よみものページの雑誌表紙たち


コラム 恐怖! 名を変えて蘇る吸血鬼少女まんが

コラム 戦後の吸血鬼ブームを犬が下支えした

絵物語 再録
吸血鬼ドラキュラと少女の愛の物語

のろわれた花嫁(え・高橋真琴 文・小川真理)


・一九七〇年代
若い女性まんが家たちの恐怖ミステリー

深いむらさき色の…(ささやななえ)/赤い蜘蛛(山本優子)/血ぬられた肖像画(原作・一条明 まんが・松井由美子)/しのびよる影(原作・西谷康二 まんが・菅沼美子)/悪魔をよぶ城(原作・藤木靖子 まんが・杉本啓子)


コラム 吸血鬼はヨーロッパ辺境の文化
 マグノリアの天使(原作・藤木靖子 まんが・菅沼美子)/暗やみの紅いバラ(杉本啓子)/血を吸う薔薇(西島恵子)/血ぬられた愛(成毛厚子)/悪魔のラブ・ソング(松井登美子)/赤い爪あと(菊川近子)/吸血樹(柿崎普美)

吸血鬼ラブコメディの幕明け

彼女は吸血鬼(山本優子)

コラム 自吸自足の愉しみ
 吸血鬼はおいや?(新谷かおる)/クレージーハウスの同居人(伊丹理央)/ミス・ドラキュラ参上(伊丹理央)/きみの血を…(松本洋子)

コラム ネアンデルタール人の末裔と鬼の末裔
 ドラキュラ伯爵シリーズ 夏の休日/春の訪問者/ものおもいの秋/スーパースター(青木庸)/こうもり城シリーズ こうもり城で恋してみない?/一族がやってきた!/恋しちゃったの モンスター(星川とみ)/ヘイ!ハウス(岩本葉子)/おどろき 桃の木 吸血鬼(西尚美)/愛血バンピール(小役丸祥子)/わたしの王子様はドラキュラ?(市川鈴)

コラム パラサイトという鬼と由良の門を


・新時代の美しい吸血鬼ロマン

美しき吸血鬼(飛鳥幸子)/トランシルバニア=レクイエム(星合操)/青い夜の誕生日(神奈幸子)/吸血鬼のアダムへ…(山口明日香)/血を吸うバラ(城章子)/ドラキュラの息子たち(岩川ひろみ)

コラム 弱点王
 満月の夜にはバラの花を/バラと霧の城(ひたか良)/吸血のデアボリカ(魔夜峰央)/緑の館の吸血鬼(小形啓子)

コラム 現代人は半吸血鬼


・大御所たちの華麗なる吸血鬼ストーリー

花のようなリリペット(わたなべ雅子)/J・スミス氏の赤ちゃん(わたなべまさこ)/薔薇にくちづけ(里中満智子)/ベルサイユのばら外伝「黒衣の伯爵夫人」(池田理代子)/十字架に血のさかずきを(高階良子)/ドラキュラ館は大騒動!(青池保子)/花炎鬼(牧美也子)

コラム 吸血鬼は狭間をさ迷う
 満月城へようこそ(忠津陽子)/ガラスの仮面「カーミラの肖像」(美内すずえ)


・吸血鬼ギャグと七〇年代ポエム
吸血鬼の鎮魂歌(河あきら)/ドラキュラくん(しやま礼)/ドラキュラは美人がお好き(エンゼル松本)/メニュー(倉多江美)/ドラキュラ・ベイビー(しもどんど)/ドラキュラ氏の復活(市川みさこ)/ドラキュラ恐怖の一夜(おかのきんや)/花盗人(睦月とみ)

ミニコラム
吸血鬼ギャグとトマトジュース/しもどんと/おかのきんや/睦月とみと矢代まさこ


一九八〇年代以降の名作吸血鬼少女まんが
 ときめきトゥナイト(池野恋)/トランシルヴァニア・アップル(樹なつみ)/ばらの封印(小室しげ子)/吸血鬼伝説 血の悪夢(さがみゆき)/純白の血(篠原烏童)/もしかしてヴァンプ(橘裕)/吸血鬼幻想譚(めるへんめーかー)/夜明けのヴァンパイア(原作 アン・ライス、まんが 篠原烏童)/ヴァンパイア騎士(樋野まつり)/黒薔薇アリス(水城せとな)/黒伯爵は星を愛でる(音久無)

コラム アメリカ版『ポーの一族』『銀河荘なの!』

古典 吸血鬼少女まんが年表(1950~1980年)

準古典 吸血鬼少女まんが年表(抜粋) (1981~2000年)
(参考 近年のおもな吸血鬼少女まんが 2001~2018年)

おわりに

索引

おもな参考文献  

 

◆著者 中野 純(なかの・じゅん)

少女まんが館共同館主、体験作家、闇歩きガイド
1961年東京都生まれ。年子の姉と妹に挟まれて少女まんがにまみれて育ち、やがて姉や妹よりも少女まんがに詳しくなる。パルコでイベント企画、宣伝を担当後、フリーに。1989年に大井らと有限会社さるすべりを設立、1997年に大井らと少女まんが館を創立。『「闇学」入門』(集英社新書)、『闇と暮らす。』(誠文堂新光社)、『月で遊ぶ』『闇を歩く』(アスペクト)等の暗闇関係の著書のほか、地獄の婆鬼、奪衣婆について熱く語った著書『庶民に愛された地獄信仰の謎』(講談社+α新書)も。

 

◆著者 大井夏代(おおい・なつよ)

少女まんが館共同館主、研究編集者
1961年神奈川県生まれ。少女時代、『ポーの一族』主人公の吸血鬼エドガーがいつでも入ってこれるようにと2階の自室の窓を開けて寝た。大学の卒論のテーマは少女まんが。パルコ『アクロス』編集室を経て、フリーの編集者、ライター、ストリートファッション考現者に。最近は雑誌の少女まんが特集の監修も。著書に『あこがれの、少女まんが家に会いにいく。』(けやき出版)、『詳述 激安マック買物記』(マガジンハウス)、共著に『デジタル・ジェネレーション』『ストリートファッション』(パルコ出版)等。