書 籍
特攻セズ 美濃部正の生涯
境 克彦 著
四六並製 380頁
定価:1,800円+税
ISBN:978-4-908925-16-0
特攻セズ 美濃部正の生涯
生きて還れ、戦うために。
太平洋戦争末期、敗色濃いなか、航空戦力全軍特攻の方針が出される。
この方針に敢然と反旗を翻した指揮官がいた。
自ら夜戦航空部隊を錬成、沖縄上陸米軍爆撃を敢行し、
戦後は、航空自衛隊の育成に尽力した名指揮官の生涯を描き出した、初の評伝!
◆編集者からひとこと
著者の境さんは、特攻を拒否した美濃部正さんについて、
「実際の彼は決して豪傑でもなければ英雄でもなかった。普通に迷い悩み、家族や部下を思い、命を大切にする等身大の人間だった。……あの時代には、それが一番困難な生き方だったはずである。」
と書いています。
美濃部正さんの生き方が、現在を生きる我々の胸を打つのは、絶望的な状況にあっても、考え、苦悩することをやめなかったからだと思います。
本書を通して、読者の皆さんが、美濃部さんの生き方に触れていただけるなら、嬉しいです。
◆目次
序章 特攻作戦と美濃部少佐
第1章 空に憧れた大正っ子
貧乏地主の次男坊/父母の面影/谷間の世代/死にかけた野生児/兄の一言/兵学校受験
第2章 江田島海軍兵学校
海軍生徒を命ず/分隊生活/五省/父の死/留年の危機/初級士官心得/反骨のクラスカラー/ヨーロッパ遠洋航海
第3章 水上機パイロット
航空「大熱望」/飛行学生拝命/海の生命線との出会い/苦渋の婚約破棄/弾幕の洗礼と初の被弾/フランス空軍基地強行偵察/失敗と試行錯誤の日々
第4章 太平洋戦争始まる
駆け込み結婚/真珠湾奇襲作戦/無風の快進撃に戸惑う/航空音痴の司令官/生家に届いた戦死公報/インド洋上、生か死か
第5章 暗雲をさまよう孤鷲
岩国作戦会議/ミッドウエーからの凶報/「アリューシャン強襲」の実態/無益な戦い/小松島航空隊教官/斬新過ぎた提案
第6章 夜襲戦法と零戦転換
搭乗員の墓場/相次ぐ誇大戦果/級友に遺髪を託す/玉砕決意の訓示/ラバウル野戦病院/夜間爆撃成功/異例の発令と戦闘機屋の蔑視/さらばソロモン
第7章 翻弄される指揮官
軍令部に直談判/夜襲部隊発足/解任人事/再起/フィリピン出陣/体当たり待て/ダバオ水鳥事件/有馬少将死す/神風特攻隊/大西中将との対話/非情の帰国命令
第8章 芙蓉部隊発進せよ
藤枝基地発見/隊旗受領/猛訓練と猫日課/美濃部兵曹/最初で最後の特攻命令/木更津作戦会議/特攻拠点鹿屋/菊水作戦の決死行
第9章 最後の決戦秘密基地
牧場に見せ掛けた飛行場/指揮官留任を直訴/待遇差別粉砕/遠のく希望/宇垣中将の視察/聖断に迷う/岩川基地の終焉
第10章 平和日本を見つめて
復員支援/赤貧に安らぐ/航空自衛隊創設/美保の鬼司令/若手隊員たちの記憶/約束の地へ
終章 語り継がれる物語
あとがき
◆著者 境 克彦(さかい・かつひこ)
ジャーナリスト。1959年、大分県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、85年、時事通信社入社。
政治部、高松支局、経済部、ワシントン支局を経て、2011年に経済部長。その後、福岡支社長などを歴任し、17年6月より編集局長。